2019 Fiscal Year Research-status Report
革新的なヒト完全iPS由来人工肝臓の作成による肝不全に対する新たな治療法の開発
Project/Area Number |
19K18152
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
武石 一樹 九州大学, 大学病院, 助教 (50733713)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | iPS細胞 / 肝再生 / 人工肝臓 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトiPS細胞を大量培養し、そこから内胚葉、肝細胞への分化を確立した。iPS細胞由来肝細胞は、肝細胞特異的遺伝子である、HNFやアルブミンの発現を認めた。この主義を確立し、これらの遺伝子の発現量は、正常肝細胞と同レベル程度まで認めるようになった。この肝細胞をプレートから剥がすのに、工夫が必要であった。トリプシン、アキュテーゼなどの薬品を使用し、細胞死を抑制した状態で、最も効率よく細胞を回収するために、薬品の混合率や時間を振ることで、最善の細胞採集できる条件を整備した。この肝細胞をレトロシンを投与した免疫抑制ラットに肝細胞移植した。レトロシンは、ラットの肝細胞の肝再生を抑制し、移植したヒトiPS細胞由来肝細胞のラット内での分裂を促進するために投与するが、免疫抑制ラットは、正常ラットと比べ、非常に弱いため、その投与量は正常ラットの80%doseが適量であることが判明した田め、その量を投与することとした。80%肝切除モデルにヒトiPS由来肝細胞を移植し、3ヶ月間飼育した。2週間毎に血液を採取し、ヒトアルブミン量を測定することで、ヒトiPS細胞由来肝細胞の再生量の指数とした。血中のヒトアルブミン量は、0日目では検出不能であったが、移植後30日目より検出できるようになり、60日目にピークに達した。移植後90日目にラットから肝臓を摘出したが、肝臓は肥大していた。免疫組織学的染色にて、約40%のヒトアルブミンの染色の陽性率を認め、ラット肝内において、ヒトiPS由来肝細胞の培養に成功した。人工肝臓を作成するためのScafoldの作成もできた。正常ラットより全肝を摘出し、門脈からトリプシン、コラゲナーゼ処理することで、ラット肝内の細胞を除去することに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
iPS細胞大量培養の習得は概ね順調に進展した。肝細胞への分化も概ね順調にでき、再現性も担保できた。動物実験では、免疫抑制ラットが非常に弱く、出生率も低いため、大量に使用できる状態には少し時間を要した。また、レトロシン投与量の決定、肝切除の技術習得は正常ラットと免疫抑制ラットでは、耐術能に違いがあったため、時間を要し、ラットの使用数にも限界があったため、時間を要したが、習得することができた。肝細胞移植後は動物実験のため、90日間の飼育が必要であり、時間を要したが、概ね予定通りの結果になっている。人工肝臓作成のために必要なScafoldも作成することができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
ラットの肝細胞移植の再現性の評価が必要である。現在、4匹の移植に成功しているが、5匹以上で再現性の評価をする予定である。移植後の再現性を評価後に、ラットの肝臓からiPS細胞由来肝細胞を再採取する方法の確立を行う。ラット肝のisolationを行う。ラットの細胞とヒトの細胞では、HLA型が違うため、ヒト特異的もしくは、ラット特異的HLA抗体をMACSに使用し、ラット由来細胞、ヒト由来細胞を分ける。分けた後にFACSを用いて、ヒト由来細胞およびラット由来細胞の混入率を評価する。ヒトiPS細胞由来肝細胞を集め、肝機能、分化度を移植前の細胞と比較し、ラット内で増殖させることで、分化度が進むのかどうかを判定する。Scafoldに再採取したヒトiPS細胞由来肝細胞を再細胞化する予定である。その際に必要な他の細胞(胆管細胞、血管内皮細胞、線維化細胞)も一緒に再細胞化する予定である。再細胞化後は、3次元培養後での肝機能、肝細胞の分化度を2次元培養時と比較して、検討する。最終的には、この人工肝臓を免疫抑制ラットに移植し、生体内での人工肝臓の機能を評価する予定。
|