2020 Fiscal Year Research-status Report
TIMPを介した癌関連線維芽細胞による大腸癌進展調節機構の解明と臨床応用
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19K18159
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
仲井 希 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (50811717)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 癌関連線維芽細胞 / CAF / TIMP-1 / 遊走 / 大腸癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は癌関連線維芽細胞(以下CAF)が大腸癌細胞の浸潤能や遊走能に関与しているのかを明らかにすることである。大腸癌細胞株をCAFと共培養することで一部の大腸癌細胞株の遊走能が亢進する結果を得ており、共培養の上清のサイトカインアレイを行ったところ、一部のTissue inhibitor of matrix metalloproteinase (TIMP)とmatrix metalloproteinase(MMP)、他数種類のサイトカインの分泌増加が示唆された。このうちTIMP-1に我々は着目している。 前年度までの実験で、癌細胞よりもCAFからTIMP-1分泌が多く、共培養にてさらに増加する結果を得た。またwound healing assayにおいて、一部の大腸癌細胞株でTIMP-1投与により遊走能亢進を認め、TIMP-1中和にて抑制された。これより一部の癌細胞株でCAFから分泌されるTIMP-1が癌遊走能を亢進させることが示唆された。 今年度は、TIMP-1が癌細胞のアポトーシス抵抗性をもたらすとの報告がみられるものの、機序やCAFの関与についての報告はないため検証した。大腸癌細胞株をCAFと共培養することで、抗アポトーシス蛋白Bcl-xLとMcl-1の発現が増強することを確認できたが、その機序やTIMP-1との関連は依然として不明であり、今後も検証していく必要がある。さらにはTIMP-1以外にCAFから分泌され浸潤能や遊走能に影響を与える因子についても、Chitinase 3-like 1(以下CHI3L1)に着目し、CAFの方が癌細胞よりもCHI3L1を多く分泌しているとの結果を得ている。しかし実際に浸潤能や遊走能に影響を与えるか、また他にも癌浸潤・遊走に影響するサイトカインがあるか、それはTIMP-1と関連しているかなど不明な点は多く、今後も検証していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
培養上清のサイトカインアレイにより、CAFから分泌され癌の浸潤能・遊走能を亢進させるサイトカインとしてTIMP-1に着目し、検証している。前年度までの実験にて、複数の大腸癌細胞株およびCAFを用いて、TIMP-1の分泌を培養上清のELISAで比較検討したところ、癌細胞よりもCAFからTIMP-1分泌が多く、共培養にてさらに増加した。またwound healing assayにおいて一部の大腸癌細胞株でTIMP-1投与により遊走能亢進をみとめ、TIMP-1中和にて抑制された。これより一部の癌細胞株でCAFから分泌されるTIMP-1が癌遊走能を亢進することが示唆された。これまで得られた結果について論文投稿を予定している。 今年度は、TIMP-1が癌細胞の増殖やアポトーシス抵抗性をもたらすとの報告もみられるものの、どのような機序やシグナル伝達によるかの報告には乏しく、CAFと抗アポトーシス蛋白の関連についても検証した。大腸癌細胞株をIL-6で刺激、もしくはCAFと共培養することで、抗アポトーシス蛋白Bcl-xLとMcl-1の発現が増強することをウエスタンブロッティング法で確認できた。さらに、TIMP-1以外にCAFから分泌され癌浸潤能・遊走能に影響を与える因子として、やはり各細胞の培養上清のサイトカインアレイによりChitinase 3-like 1(以下CHI3L1)に着目した。RT-PCR・ELISAにおいて、CAFの方が癌細胞よりも、CHI3L1の発現が強く分泌が多いとの結果を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
TIMP-1がどのような機序でCAFから分泌されるか、癌の浸潤能・遊走能を亢進させるかは依然として不明である。癌細胞株によってTIMP-1感受性が異なることもあり、シグナル伝達経路を含めた機序について解明していく。またTIMP-1と抗アポトーシス蛋白Bcl-xL・Mcl-1発現は関連があるかについても確認する。 さらには、TIMP-1以外にCAFから分泌され浸潤能や遊走能に影響を与える因子についても、その同定と機序解明を連鎖的に行っていく。前述の通りCHI3L1に着目しているが、CHI3L1は実際に浸潤能や遊走能に影響を与えるか、どのような機序で癌進展に影響するか、また他にも同様に癌浸潤・遊走能に影響するサイトカインがあるか、それはTIMP-1と関連しているかなどを解明すべく検討していく。
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Causes of Carryover |
前年度に引き続き、繰り返す検証実験が重なったため実質の経費としては少ない。また、コロナ禍において学会参加の制限がかかり旅費が抑えられた。今後はさらなる検証のため各種薬剤やELISAキット等実験備品の購入が必要である。また、論文投稿を予定しており、前年度の残額も含めてその購入費用・校正・投稿料など必要経費に充当する予定である。
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