2019 Fiscal Year Research-status Report
Basic analysis and gene therapy for prevention of early liver metastasis after pancreatic cancer surgery
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19K18164
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Research Institution | Jikei University School of Medicine |
Principal Investigator |
斉藤 庸博 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (80742775)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 膵癌肝転移 / NF-kB / miRNA / 遺伝子治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌術後早期の肝転移は予後を左右する重要な問題である。原因の一つとして、術前に画像上検出し得ない微細な肝転移がすでに存在する可能性や、術中に膵臓や十二指腸を授動する手技に伴い癌細胞が飛散し経門脈的に肝臓へ生着する可能性が考えられている。一方、膵癌細胞では恒常的に 炎症性転写因子である nuclear factor-kappa B (以下NF-kB) が上昇しており、癌細胞の増殖や転移が促進される。とくに、転移・増殖に関係するシグナルを活性化することが知られており、NF-kB は肝転移の形成に重要な役割を果たしている。 セリンプロテアーゼ型タンパク分解酵素阻害薬である FUT-175や、免疫調節薬である Pomalidomide が膵癌マウスモデルにおいてNF-kB 活性化を抑制し抗癌剤感受性を高め、抗腫瘍効果を増強することを我々はこれまでに報告してきた。 そこで、これらの術前投与が膵癌術後早期の肝転移を抑制する可能性に注目し、マウス由来膵癌細胞 (PAN02)をマウス(C57BL)脾臓に接種し膵癌肝転移マウスモデルを作製、FUT-175の周術期投与により膵癌肝転移が抑制されることを確認した (Saito N et al. Surgery 2019)。 しかし、FUT-175 などのNF-kB 阻害剤には副作用として易出血性や免疫抑制効果があり、臨床的にそのまま使用することにはリスクもある。そこで膵癌の肝転移マウスモデルを用いてNF-kB 阻害剤投与前後で変動するMicro RNA (以下miRNA) を解析し新規治療法の開発を目的として実験を計画した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
FUT-175を周術期に投与することにより早期肝転移を予防する効果が確認された (Saito N et al. Surgery 2019)。本論文では、マウス由来膵癌細胞 (PAN02)と免疫系の正常なマウス (C57BL) を用いて、NF-kB 阻害剤 (FUT-175 80 ug/ml)により前処理したPAN02を接種する群 (F 群)と薬剤の溶媒のみで処理した細胞を接種するcontrol群 (C 群)にわけ、PBSに溶解した1×106 個/5ul の膵癌細胞をマウスの脾臓に接種後、週に1回小動物用 9.4T MRIにて経時的に肝転移を評価し、無再発生存期間 (DFS)と全生存期間 (OS)を観察した。さらに、マウス体重、摘出検体の腫瘍体積・重量・肉眼的転移個数を評価、摘出検体より抽出したタンパクのWestern blotting により各種シグナルを確認した。F群ではC群よりも有意にDFSおよびOSが良好であることを確認した。また、F群ではC群よりもVEGF、ICAMの発現が低下していることを確認した。 さらに、上記のex vivoのみならず、in vivoの実験系として、未処理のPAN02を脾臓に接種したマウスを、週3回FUT-175 30mg/kgで治療するFUT-175治療群 (F群)と対照群 (C群)の2群に分け、肝転移の有無を7日後に犠牲死させ確認した。本実験でも有意差をもってF群ではC群よりも肝転移個数が抑制さえていることが確認できた。 FUT-175の遺伝子標的を解析するため、1×106 個/5ul の膵癌細胞をマウスの脾臓に接種後週に3回 FUT-175 (30 mg/kg)で治療した群 (F群)と対照群 (C群)の血清を採取しmiRNA解析を行った。結果は現在解析中であり、得られた結果により標的遺伝子が同定され次第、遺伝子治療を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、FUT-175投与によりマウス血清内で変動するmiRNAの解析を行っており、その結果を解析してターゲット遺伝子を同定し、それを標的としたsmall-interfering RNA (siRNA) を作製する予定である。siRNA投与群、siScr投与群、vehicle群の3群にわけ、まずはin vitroで浸潤・転移能の評価を行う。投与量は細胞増殖能には差が出ない範囲の量とし、MTT assayで濃度を振り検討する。 さらにin vitroと同様、siRNA投与群、siScr投与群、vehicle群でそれぞれ膵癌肝転移モデルを作製し、小動物用MRIにて経時的に腫瘍を評価する。評価項目はFUT-175投与時と同様とする。 なお、本実験で変動するmiRNAが同定されれば、膵臓癌肝転移のマーカーとしても活用できる可能性がある。また、膵癌に限らず他の癌腫の肝・肺・骨転移などに対する応用も期待できる。大きな発展性のある実験であり、まずはマイクロアレイの結果が待たれる。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、miRNA解析のための消耗品購入を前年度に行う予定であったが、発注時期が今期にずれ込んだため次年度に繰越させていただくことになった。
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