2021 Fiscal Year Research-status Report
静脈グラフト内膜肥厚における外膜細胞の保護的役割とエクソソームの関与
Project/Area Number |
19K18168
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
竜川 貴光 旭川医科大学, 大学病院, 助教 (80837914)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | エクソソーム / 末梢動脈疾患 / 血管内膜中膜肥厚 |
Outline of Annual Research Achievements |
末梢動脈疾患(PAD)に対する外科的治療である動脈バイパス術では、材料とする下肢表在静脈において、術後内膜中膜肥厚(平滑筋細胞(SMC)の増殖)によるグラフト狭窄及び閉塞が臨床的に重大な合併症・問題となっていることを背景とし、原因であるSMCの異常増殖が、外膜に存在する線維芽細胞(Fib)との細胞間相互作用が制御因子の一つであると推定されている。本研究の目的はその情報伝達が細胞外小胞(エクソソーム)を介したマイクロRNA(miRNA)の受け渡しによって行われていると仮説を立て、その研究解析を行うものである。前年度までで、共培養モデルによるFib上清のSMC増殖能への影響を解析し、Fibの培養上清がSMCの増殖能に抑制的に働く傾向があることを確認した。最終年である今年度は、PAD患者由来の静脈から抽出したSMC、Fibから、培養上清中のエクソソーム分画をペアで抽出し、一定のサンプル数を用いて次世代シークエンサーによる群間比較・検討を行うことを目的とした。しかし、一般的に通常の細胞は腫瘍細胞株などに比べエクソソームの分泌量が少量であり、本実験でもエクソソーム分画を少量得るのに大量の培養上清を要し(培養上清100mLを200-300uLに濃縮して解析可能下限のタンパク濃度)、条件検討に前半期間を費やした。後半は条件検討が固まり、エクソソーム分画のサンプル調整を行った。最終的に5ペアを確保し、それらに含まれるmicroRNAに関してNGS解析を行った。ライブラリーは今年度3月末に完了し、現在解析中である。まだ解析途中ではあるが、Fib上で特異的に発現しているmiRNAが複数検出できており、今後はそれらのmiRNAについて吟味、SMC増殖能への寄与を検討してく方針である。エクソソーム分画の抽出量が微量であるため、エクソソームの添加実験が不可であった。今後の課題と考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究前半のコロナ禍による手術制限・実験制限で生じた遅れは2021年度でおおむね解消できた。理想的には2021年度中にNGS解析の結果を加味し、目的としたmiRNAによるSMC増殖能への影響について実験を進められればなお良しといったところではあるが、今後の課題に留めている。研究期間中で発表できる形にまで推敲できなかったことが悔やまれるが、今後研究継続する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の方針として、直近に結果が出たNGS解析からFib特異的なmiRNAについて各々の既報やgene bankによるターゲット遺伝子などを調べ、SMC増殖制御の候補遺伝子となるものを抽出する。抽出されたmiRNAに関して、SMC培地中への添加実験を行い、増殖能における影響を解析する。その結果からさらにターゲットmiRNAを絞り込み、動物実験への移行も検討する。実験責任者はマウスを用いた内膜肥厚モデルの経験もあり、動物実験への移行の際は同モデルの活用も検討する。
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