2019 Fiscal Year Research-status Report
大動脈弁石灰化進行の分子生物学的メカニズムに着眼した大動脈弁狭窄抑制薬の開発
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19K18171
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
立石 渉 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (50722378)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 大動脈弁狭窄症 / 石灰化 / PD-1/PD-L1 |
Outline of Annual Research Achievements |
大動脈弁狭窄症の根本的な治療方法は手術のみであり、本疾患の発症や進行を抑制するような治療法はなく、その発症メカニズムの解明と、手術に代わるより低侵襲に実施可能な新規治療の開発が切望されている。 これまでに、大動脈弁狭窄症の石灰化は、高齢で起こるカルシウム沈着の単純な受動的プロセスとは考えられておらず、血流ストレスや、LDLやマクロファージやT細胞による組織障害や炎症などの影響に加え、骨芽細胞/破骨細胞が大動脈弁を含む大血管の石灰化に寄与すると考えられて研究されてきている。CD8陽性T細胞や単球/マクロファージ、骨芽細胞/破骨細胞はがん領域で注目されているPD-1/PD-L1たんぱくが制御するシグナルとして注目されている。このことから、大動脈弁の石灰化に対しても炎症細胞の浸潤が起こり、それを制御するPD-1/PD-L1たんぱくが発現している可能性が考えられた。 まず当該研究対象症例の大動脈弁組織への炎症細胞浸潤の程度の評価として、ヒト大動脈弁切除組織における細胞傷害性T細胞マーカーCD8、単球/マクロファージマーカー (CD86, CD163, CD47)、抑制性T細胞マーカー (CD4, FOXP3)の発現の有無を免疫染色法で評価した。そしてヒト大動脈弁切除組織の PD-1/PD-L1シグナルを評価するためにPD-1、PD-L1の発現部位、強度を免疫染色法で評価した。その結果、炎症細胞浸潤が多い組織においてPD-L1たんぱくが多く発現していることが判明した。炎症細胞が少ない症例ではPD-L1の発現が低いことから、炎症細胞の浸潤によりPD-L1が誘導されている可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
標本の獲得、免疫染色の評価などはほぼ予定通りに施行された。 ただし、研究の予定として、学会発表まで行う予定であったが、COVID-19による研究棟立ち入り禁止の影響により、免疫染色の進行の遅れ、データ抽出の遅れが生じた。 そのため学会への発表が不可能であった。
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Strategy for Future Research Activity |
現時点での結果を論文化し投稿中。 また次回の日本心臓血管外科学会での発表をする予定である。 今後は、症例の臨床評価との検討を行うこと、ヒト大動脈弁切除組織の骨芽細胞 (ALP)/破骨細胞 (TRAP)をTRAP/ALP染色キットを用いて染色し、その発現部位、発現強度を評価すること、各種たんぱく発現部位、強度を内皮細胞、間質、線維化、石灰化の部位ごとの発現を詳細に検討する。
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Causes of Carryover |
免疫染色に必要な人員を確保する必要があったがCOVID-19により確保が困難となり、そこにしようする額が次年度仕様に繰り越しとなったため。
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