2020 Fiscal Year Research-status Report
胸腹部大動脈周術期の脊髄血流の定量化と人工知能による脊髄虚血予測モデルの構築
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19K18182
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
四條 崇之 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (00644890)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 脊髄虚血 / 脊髄血流側副血行路 / 胸腹部大動脈瘤 / 下行大動脈瘤 |
Outline of Annual Research Achievements |
所属研究機関の移動に伴い、胸腹部大動脈瘤症例のみならず下行大動脈瘤データベース構築を再度行った。下行大動脈及び胸腹部大動脈瘤手術における合併症である脊髄虚血に関する研究及び学術発表を行った。 胸腹部大動脈瘤術後には脊髄血流に重要な分節動脈が多数閉塞することで脊髄血流が低下し脊髄障害を生じる。そこで、脊髄血流に重要とされる、Th9からL1 までの分節動脈を閉塞させた19例の胸腹部大動脈手術症例の術後CTにおいて、重要な肋間動脈への末梢動脈からの側副血行路を検討した。結果として、一定の法則性を持って体表を通って重要な分節動脈に側副路が発達することが判明した。また、左開胸の手術を行った既往のある症例においては、左側胸部を介した側副路が発達しないことが証明された。"Extrathoracic Collateral to Critical Segmental Arteries after Endovascular Thoracoabdominal Aneurysm Repair"と題した論文がInteractive CardioVascular and Thoracic Surgeryに掲載された。また、上記側副血行に影響する外腸骨動脈が狭小な症例のステントグラフト内挿術では脊髄虚血が発生しやすい事が示され、これを共著者として欧州胸部外科学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
胸腹部大動脈瘤及び下行大動脈症例の様々な要素、変数を調査し、周術期の脊髄虚血の予測及び予防を可能としうるデータベース構築を行った(年齢、性別、並存疾患、既往大動 脈手術, 瘤径、治療範囲、神経根髄質動脈の本数・位置、開存している分節動脈、側副血行の源流となる末梢動脈の開存有無、大動脈性状、術式、 脊髄障害発 生の有無)。約1000例のデータベース症例が蓄積できた。昨年度同様、前脊髄動脈の血流評価方法を模索したが、侵襲度の低い定量的評価法は確立できなかった。現状、代替的に術後CTによる側副路の発達の状態や数を検討することとなっている。また、コロナ禍の影響によりその臨床対応や研究における各部署との折衝に困難を生じた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、周術期の脊髄血流の増減を反映する検査法の検索が必要である。初年度検討したNIRS(近赤外分光分析法,光トポグラフィ)の使用については、簡便に脊柱周囲の血流評価が可能であり、デバイスも既存のものが使用可能であることがわかり、プレリミナリーに使用を開始したい。血流量のみならず、血管性状が虚血イベントに寄与する可能性が高いことが証明されてきている。血管性状を簡便かつ定量的に評価できる方法が確立されていない。現在、ソフトウェア(OSIRIX)のプラグイン機能を利用して、大動脈の凹凸を数値化し、血管性状の程度を評価する試みを始めている。プラグインの開発は仮実装できており、これを使用した大動脈性状評価が脊髄虚血発生率と相関するかを検討していく。並行して機械学習による脊髄虚血発生ハイリスク症例の予測モデルの構築を試みる。
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Causes of Carryover |
NIRSによる相対的脊髄血流測定を検討しており、その資金に充てたい。また、コロナ禍による各種学会の中止により、滞っていた研究発表や情報収集をウェブ参加により積極的に行っていきたい。これまで収集したデータベースを元に実臨床に直結するデータについても学会、英論文で発信していきたい。昨今の状況を鑑み、ウェブ学会やウェブ会議の環境を整えるための設備も整えたい。
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Research Products
(5 results)