2019 Fiscal Year Research-status Report
心臓血管外科手術に対する水素ガスの手術侵襲軽減効果のメカニズムの基礎実験的解明
Project/Area Number |
19K18189
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
山田 敏之 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 助教 (10728299)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 水素 / 動脈硬化 / アディポネクチン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、水素の外科的手術侵襲の軽減の作用を基礎実験的手法を用いて証明し、その成果を臨床応用へと繋げることである。 心臓血管外科の手術における「手術侵襲の軽減」は至上命題である。これまで我々は、実際の冠動脈バイパス手術において使用するグラフト血管の、採取時におけるグラフト自体への外科的手術侵襲の程度を基礎実験的な手法を用いて解析し、その結果をもとにより低侵襲なグラフト採取法を提言してきた。 また近年、水素が体の中の悪玉活性酸素(酸化や老化を促す物質)を排除する働きがあるという科学的裏づけが報告された。我々の領域において水素の働きとして注目すべきは、虚血再灌流障害の軽減や抗炎症作用等の作用であり、これらは外科手術侵襲の軽減のメカニズムとなり得る。しかし、血管そのものに対してどのような効果を示すかに関しては報告がない。そこで、我々が有する「血管に対する手術侵襲の程度を定量化」のノウハウを元に、水素の血管に対する効果とそのメカニズムの解析が可能である。 本研究は、単に採取したグラフト血管と水素との反応のみならず、水素の臓器への直接的な効果・メカニズムを解明する第一歩となり得る。さらに、水素の使用自体は非常に簡便であるために、実際の手術に操作として加えることは物理的に容易であると考える。つまりトランスレーショナルリサーチとして基礎の結果を直接実臨床へと応用可能であると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々の施設では、当初予定した静脈グラフトの採取数が少ないという問題が生じたため、炎症反応・動脈硬化の評価の対象物を脂肪に変更した。 当院にて予定された心臓・大血管の手術患者から脂肪細胞を採取(皮下・胸骨下・大動脈周囲・心臓表面)し、各部位の炎症・動脈硬化の性質の違いを証明する実験を、本学倫理委員会にて承認を受けた上で開始した。また、すでに脂肪細胞と動脈硬化との関係について先行研究を行なっていた愛知学院大学歯学部附属病院内科学講座と共同研究の形式で、本研究をサポートしていただくこととなった。さらに現在、水素の抗炎症作用を証明するための水素と脂肪細胞を使用した実験について、本学倫理委員会審査の準備中である。
|
Strategy for Future Research Activity |
近日中に前述の倫理委員会での承認が得られたら、早急に患者から採取した脂肪細胞に水素を添加し、水素と炎症・動脈硬化に関する実験を開始する。脂肪に関する炎症と動脈硬化の定量については既に手法が決定している。脂肪を採取する患者の動脈硬化の有無、脂肪採取した部位による反応性の違い、水素添加の有無がパラメーターとなる。現状週1-2名からサンプルを採取できているので、今後も同ペースで採取し続けた場合、今年度中には本実験系でのプレリミナリーなデータが十分採取できると考える。
|
Causes of Carryover |
軽微な実験系の変更により、一番高額な実験器具の選定が次年度へと遅れたため。
|