2020 Fiscal Year Research-status Report
16S rRNA配列解析を利用した感染性大動脈瘤患者の起炎菌同定法の開発
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19K18190
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Research Institution | Tohoku Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
松岡 孝幸 東北医科薬科大学, 医学部, 助教 (80816447)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 血流感染症 / 16S rRNA遺伝子 / 細菌感染症 / 起炎菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は研究室の立ち上げに始まり、主に16S rRNA遺伝子配列解析による菌種同定法に関して、感度向上を目指した条件検討を行った。その結果、既に感染組織検体に対しては十分な感度をもって起炎菌を検出することが可能となっており、本年度は研究主題である、血液検体からの起炎菌検出を試みる段階まで進んでいる。感染症患者においても血液中に含まれる菌量は極微量であることから、高感度で起炎菌を検出することは必ずしも容易ではなく、現在もさらなる感度向上を目指した手法の検討中である。 また、本年度は実臨床検体に対する応用も次々と進められており、感染性大動脈瘤患者、感染性心内膜炎患者、人工血管感染疑い患者の血液検体からの起炎菌同定を試み、一部の症例では起炎菌を同定することに成功している。そして、それらの結果は、血液培養検査の結果よりも早期に判明し、培養検査の結果と完全に一致していることも確認できたことから、本研究手法が感染症治療にとって有益な情報、有効な検査手法となり得ることが示されつつある。その成果として、感染性大動脈瘤の起炎菌として報告例のなかった新たな菌種についても本手法で同定することができ、近日論文発表されるなど、一定の成果を得ることができている。 一方、ある症例では検出された菌種が血液培養検査の結果と一致せず、採血時に混入した微量な細菌が検出されてしまっている事例も認められた。このような問題点も研究の過程で明らかとなっており、今後、検体の取り扱い方などのも含めた新たな課題に対しても改善策を検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究にとって一番重要と考えられるPCR法については条件検討が概ね終了し、実際の臨床検体を用いた検証に進むことができている。さらに本年度の成果としてcase reportをまとめることができ、進捗状況としては順調に進んでいると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究手法によって、いくつもの症例で血液中に含まれる極微量の細菌を同定することに成功している。今後、さらに実症例の血液検体で本研究手法を実践し、より最適な方法、条件設定を検証していく。また、研究の過程でPCR法の制限や限界も明瞭となってきており、PCR法に基づかない手法を組み込むことで、さらに起炎菌検出法としての質を上げていくことを検討している。 さらに、培養検査と違い、本手法の特性や検出感度の向上によって誤った結果を生じ得る可能性も示されたため、今後、コンタミネーションの検出を防ぐ検体採取法、検体の取り扱い方についても検討を行っていき、実臨床に活用できる検査法としての確立を目指す。
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Causes of Carryover |
本年度はほぼ計画通りの使用であり、年度内での負債が生じないよう調整したための少額の余剰であった。 少額余剰であるため、次年度の予算と合わせて計画通り(研究消耗品、研究成果発表など)の使用予定である。
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