2023 Fiscal Year Annual Research Report
体外循環時の酸化ストレスによる赤血球溶血の機序解明と新規予防法の開発
Project/Area Number |
19K18196
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Research Institution | Tenri University |
Principal Investigator |
曽山 奉教 天理大学, 医療学部, 准教授 (10811797)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 体外循環 / 酸化ストレス / レドックス / チオール基のラベル化 / 炭酸脱水酵素 |
Outline of Annual Research Achievements |
体外循環では、人工肺に高流量の酸素を吹送しガス交換が行われるが、このとき血液は過度の酸化ストレスに曝される。この酸化ストレスは溶血性貧血や急性腎障害など術後合併症の原因となるが、体外循環中にこれらの酸化ストレスをモニタリングする有用なバイオマーカーはない。我々はレドックス(酸化還元)制御蛋白質である赤血球内のチオレドキシン(thioredoxin; TRX)に注目し、酸化ストレスがTRXのチオール基数に及ぼす影響をチオール基のラベル化(ゲルシフトアッセイ)を以って検討する中で、同じく赤血球内に存在する炭酸脱水酵素の酸化還元状態がTRXより感度良く酸化ストレス(過酸化水素)に反応することを見出した。そこで、遺伝子組み換え炭酸脱水酵素を作製し、過酸化水素濃度の上昇に伴う酸化還元状態をPEG-PCMal(SB20:DOJINDO)によるゲルシフトアッセイで検討した。結果、炭酸脱水酵素の酸化還元状態は血漿中においても過酸化水素濃度の上昇に伴い速やかに酸化型に変化することを確認した。次に、市販のプール血漿を酸素ガスに曝露し、発生した酸化ストレスを同じく炭酸脱水酵素の酸化還元状態で検出することを試みた。結果、高流量の酸素ガスを血漿へ長時間曝露したにも関わらず、炭酸脱水酵素は酸化型に変化しなかった。引き続き、血漿へのガス吹送方法、発生した過酸化水素の還元阻害物質の添加(アジ化ナトリウムなど)、血漿中に過酸化水素を発生しやすい条件設定などを通し、酸素ガスにより発生した過酸化水素の検出および体外循環中の酸化ストレスモニタリングを目指す。
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