2020 Fiscal Year Annual Research Report
TRPV4を標的とした血管・リンパ管新生に基づく虚血肢改善治療のための基盤研究
Project/Area Number |
19K18198
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
山田 英明 福岡大学, 医学部, 助教 (80785006)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | TRPV4 / リンパ管新生 / 血管新生 |
Outline of Annual Research Achievements |
重症下肢虚血に対する血管再生治療は有望な治療法であるが未だ治療法が確立されていない。その課題として血管新生時に血管透過性亢進による浮腫の形成が下肢の血流回復を阻害することが挙げられる。リンパ管は間質の浮腫を解消する重要な器官であり、我々はリンパ管を制御することが課題解決に重要であると考えた。TRPV4は血管内皮細胞とリンパ管内皮細胞の両方に発現するカルシウムイオンチャネル受容体であり、血管内皮細胞ではTRPV4作動薬投与により細胞内のカルシウムイオン取り込みが増加し、血管新生を誘導することがわかっている。一方、リンパ管新生の誘導は解明されていない。 本研究では虚血肢動物モデルを用いてTRPV4作動薬が血管新生およびリンパ管新生を誘導し、下肢の血流を回復させることを明らかにした。 具体的には次のことを明らかにした。1)マウス虚血肢を用いてTRPV4作動薬を局所投与することで血管新生およびリンパ管新生を誘導し、下肢の血流を回復させた。2)虚血肢筋組織中のリンパ管内皮細胞では虚血肢作成前のと比べてTRPV4の発現が増加し、HIF1αの発現を認めた。3)マウスリンパ管内皮細胞を低酸素濃度で培養することでHIF1αとTRPV4の発現が増加し、さらにHIF1αのTRPV4遺伝子プロモーターへの活性が増加した。4)低酸素濃度環境によりマウスリンパ管内皮細胞のTRPV4チャネルが活性化され細胞内へのカルシウムイオンの取り込みが増加した。このことから、TRPV4作動薬がマウス虚血肢において血管新生と同様な機序でリンパ管新生を誘導させることが推察された。 TRPV4を制御する治療戦略は閉塞性動脈硬化症への有望な治療法となりうる。
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