2022 Fiscal Year Research-status Report
胸腔内ガス濃度測定による肺切除術後肺瘻の定量化と肺瘻治療の標準化
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19K18228
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
楠本 英則 近畿大学, 奈良病院, 講師 (60714904)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 術後肺瘻 / 胸腔内ガス |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度、切除術後の肺瘻の有無を客観的に評価するために胸腔ドレナージシステム回路内より胸腔内ガスを採取し酸素投与時と酸素投与後の胸腔内酸素濃度を測定し、この濃度の差がゼロとなった時点で肺瘻が停止したと判断できることを裏付ける症例を集積した.肺瘻の定量化できる優れた方法であることを確認したが,より簡便に評価できる方法を模索し,胸水内に含まれる酸素ガスおよび二酸化炭素ガス濃度を測定することを検討中である.大気中に酸素ガスは多く含まれており,わずかな変化では有意な差として認識されない可能性が十分にある一方,二酸化炭素はわずか0.03%程度しか含まれていないことからわずかであって も変化を感知しやすいと考えられる.このことから,肺瘻がある状態では胸腔内の二酸化炭素濃度が大気中より上昇し,肺瘻が減少するとともに二酸化炭素濃度が減少すると仮説を立て,二酸化炭素濃度を測定するために胸水を採取し,ガス分析装置にて解析を行う症例を集積中である.集積された結果からは胸水中の二酸化炭素分圧にはばらつきがある一方,胸水中に含まれる総二酸化炭素量は肺瘻の減少に伴い低下していく傾向が認められる.このことから,この値が定常状態となった時点が肺瘻停止として認識されると考えられ研究を進めていたが症例の集積に伴い二酸化炭素量はばらつきが大きいことが判明した.さらに手術翌日とドレーン抜去時では二酸化炭素濃度に有意差がないことが判明した。一方,有意な差の検出が困難と考えた酸素ガス分圧が経過とともにぼぼ同様の低下傾向を示し、ドレーン抜去時には大気圧下の血液ガスの酸素ガス分圧と同程度となることが判明した。さらに症例を集積し血液ガス値との比較も含め肺瘻評価として定量評価と用いれるか検討する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の通り胸水中総二酸化炭素量はばらつきが大きいが、酸素分圧はほぼ経過とともに同様に低下傾向を示すことが判明した.概ね気瘻が停止した状態での評価はできているが、気瘻が遷延する症例が不足しておりさらなる症例の蓄積が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
術後状態でも胸腔ドレーンの位置や肺切除量により術後胸水の量が微量な症例があり,採取が困難あるいは採取できても気泡の影響にて測定値の信頼性が低い症例が見受けられる.また気瘻が多い症例や遷延する症例の検討も必要であり症例を蓄積する。
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Causes of Carryover |
研究の遅れおよび社会情勢により学会発表などが行えていないため。さらに備品が必要となるため,これらへの使用と研究結果発表に用いる予定である.
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