2019 Fiscal Year Research-status Report
長時間作用型ステロイド添加による局所麻酔薬作用延長効果の解明
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19K18239
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
松田 敬一郎 新潟大学, 医歯学総合病院, 専任助教 (10816961)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 局所麻酔薬作用延長効果 / 長時間作用型ステロイド添加 / 神経成長因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経ブロックを行う際に、長時間作用型ステロイドであるデキサメタゾンを局所麻酔薬に添加すると局所麻酔薬の作用時間が延長することが知られている。しかし、ステロイドの鎮痛作用と局所麻酔薬に神経遮断効果との関連性は解明されておらず、局所麻酔薬の作用延長効果についてのメカニズムは未だに明らかになっていない。 本研究ではマウス術後痛モデルを用いて、坐骨神経ブロックに対する長時間作用型ステロイド添加による局所麻酔薬作用延長効果を、炎症性疼痛のメカニズムの一つである神経成長因子産生及びNGF-TrkAシグナリング抑制の観点から、行動学的および組織学的、生化学的に検討することを目的とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
【行動実験①】6-8週齢のC57BL/6マウスに坐骨神経ブロックを行い、薬液投与から10分後にマウスのブロック側の後肢足底に切開を加えて術後痛モデルの作成を行った。イソフルラン麻酔下に腹臥位とし、左大腿の皮膚を5mm切開し、30G針を用いて坐骨神経を覆う筋膜下に以下の薬液を投与した。①R-PD群 0.75%ロピバカイン40μL デキサメタゾン1.5mg/kg 神経周囲投与、②R-SD群 0.75%ロピバカイン40μL デキサメタゾン1.5mg/kg 右大腿筋肉内投与、③R群 0.75%ロピバカイン40μL、④Control群 生理食塩水40μL 引き続き、薬液投与から10分後に足底切開を行った。イソフルラン麻酔から覚醒後に熱刺激法のHargreaves法を用いた疼痛閾値評価を行った。ブロック施行から30分、1、2、4、6時間の時点での評価を行い、坐骨神経ブロックの効果の差を検討した。 【行動実験①の結果】R-PD群において、ブロックから2、4、6時間の時点で他群と比べて疼痛閾値の増加を認めた。この結果からデキサメタゾンを局所麻酔薬に添加して神経周囲に投与すると、局所米薬作用が延長することが示された。 【行動実験②】局所麻酔薬の延長効果がglucocorticoid receptor(GR)を介した作用であることを確かめるために、GRのantagonistであるMifepristone(MIF)を腹腔内投与後に同様の行動実験を行った。各群ともにMIF50mg/kg腹腔内投与から30分後にブロックを施行。①’MIF-RPD ①と同薬液、②’MIF-R ③と同薬液を投与、③’MIF-NS ④と同薬液を投与。 【行動実験②の結果】①で認めていた疼痛閾値の増加は①’群では認めず、MIFの投与により局所麻酔薬作用の延長効果が拮抗されたものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今まで行ってきた行動実験から、局所麻酔薬にデキサメタゾンを添加して神経ブロックを行うと、ブロックから2~6時間に渡って局所麻酔薬作用を延長させることがわかった。また、その作用はMifepristone投与により拮抗され、glucocorticoid receptor(GR)を介した作用であると考えている。 GRを介した作用がNGF-TrkAシグナリングに影響を及ぼしているかどうかを確認するために、行動実験での疼痛閾値に最も開きのあったタイミングでの組織採取を行う。行動実験からはブロック施行から4時間後の疼痛閾値の差が最も大きい傾向であったため、同時点でマウスを安楽死させ、パラホルムアルデヒドによる灌流固定を行う。組織は坐骨神経、後根神経節、脊髄の採取を行う予定である。まずは後根神経節でのp-p38に対する免疫染色を行い、各群間の差を観察する予定である。
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Causes of Carryover |
当初の予定よりも行動実験に時間がかかり、免疫染色に関しては昨年度中にほとんど行うことができなかった。今後の実験において多くの免疫染色を行うため、抗体、阻害剤、消耗品、バッファー代金として使用する予定である。また、当初購入予定であった熱刺激鎮痛効果測定装置については、昨年度は既存のもので代用できたが、古い機械であり今後新規に購入予定である。
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