2019 Fiscal Year Research-status Report
Thiel法解剖体を用いた新たな腹部超音波ガイド下神経ブロック法の確立
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19K18246
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
大神 敬子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (80812924)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 解剖体 / 超音波ガイド下神経ブロック / Thiel法 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊柱起立筋面ブロック(erector spinae plane block:ESP block)は、2016年に初めて報告され、背部第5番胸椎の高さから穿刺し、脊柱起立筋の表面に局所麻酔薬を投与する。これによって、第7頚椎から第8胸椎までと幅広い範囲の皮膚の鎮痛が可能となり、加えて、交感神経に対しても作用することが分かっている。このESP blockの穿刺位置を尾側方向へ移動することで、腹部手術の際の鎮痛にも応用できたという症例報告があるが、最適な穿刺位置については現在のところ不明である。生体に対して行った神経ブロックについての効果の検討は、患者本人に確認を行うしかないが、解剖体を用いることでより有用な薬液の広がりの知見を得ることができると考えられた。腹部の鎮痛に対してESP blockを行う場合の最適な穿刺位置や薬液量を解明するため、解剖体を用いた本研究を計画した。 本年は、医学部解剖学実習に供されたホルマリン固定日本人解剖体10体の背部の詳細な解剖を行った。腸腰筋、多裂筋、棘筋で構成される脊柱起立筋ならびに肋間神経とその分布について仔細に調査を行い、実際に腹壁に分布する肋間神経の走行について確認した。また、ご遺体搬入時に撮像した単純CT画像を検討し、背部の各筋層の深さを計測した。 また、当教室で通常行っているホルマリン固定法ではなく、新規にASケミカル社のThiel法固定液を導入し、これで固定を行った解剖体を1体作成した。Thiel法で固定を行った解剖体は生体とほぼ同様の質感を維持することができ、超音波診断装置のリニアプローブを用いると筋膜、筋肉、太い神経の同定が容易であった。しかしその一方で背部では皮下浮腫が強く、本研究に用いるためには固定液の調整と安置法の改善が必要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究においては当初15体のホルムアルデヒド法固定解剖体に対して、背部の詳細な解剖を行う予定であったが、1体につき解剖に必要な時間が長く、本年度は10体に留まった。その一方で、Thiel法固定の解剖体の作成かつ死後単純CTによる背部の筋層の検討を行うことができたため、次年度に繋がる概ね順調な進展がみられていると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
1)薬液注入に最適な部位の検討 超音波ガイド下深層体幹神経ブロックを行うにあたり、引き続きホルムアルデヒド法解剖体5体を用いて脊柱起立筋群・肋間神経・交感神経の肉眼解剖的評価を行う。さらに、死後単純CT画像で最適な層の検討を行う。 2)Thiel法解剖体の作成 前年度の経験より、薬液量を調整してThiel法固定の解剖体を2体作成する。 3)Thiel法解剖体への超音波ガイド下薬液注入 前年度ならびに1)の結果より決定した部位への色素並びに造影剤の注入を行い、Autopsy imaging用CTで注入液の広がりを画像的に確認する。更に実際に解剖し、色素の広がる範囲を同定する。
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Causes of Carryover |
デジタルカメラを購入せず、既存のものを使用したことが理由である。 次年度にマクロレンズの購入に使用する計画である。
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