2021 Fiscal Year Annual Research Report
Mechanisms for anesthetic depth fluctuation during pregnancy and anesthetic considerations for pregnant patients
Project/Area Number |
19K18266
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
本田 康子 富山大学, 学術研究部医学系, 助教 (50724572)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エストロゲン / 嗅内皮質 / カルバコール / シータ波 / 相互相関関係 / ラット |
Outline of Annual Research Achievements |
女性ホルモンと全身麻酔薬の相互作用を検討する目的で,今年度はラット嗅内皮質スライスのカルバコール誘発シータ波モデルの作製を試みた.嗅内皮質は,大脳に対する入出力ゲートとしての役割を担うことから全身麻酔薬の作用部位の1つと考えられる. 方法:麻酔した雄性ウィスターラットから脳を摘出し,嗅内皮質スライスを作製した.嗅内野外側および内背側に2本の細胞外電極をそれぞれ刺入し,シータ波を記録した.シータ波は空間認知に関連する脳波であり,アセチルコリン作動薬であるカルバコール前処置により誘発できる.2つの神経ネットワークのシータ波を相互相関解析したヒストグラムを検討に用いた.シータ波はPowerlab(AD Instruments)を用いてA/D変換し,Labchartソフトウェア(AD Instruments)で解析した. 結果:カルバコール処置により安定したシータ波が誘発された.相互相関解析では0 msをピークとしたヒストグラムが認められたことから2つのネットワークに時間的なずれは少ないことが示された.全身麻酔薬デスフルランを適用するとヒストグラムのピークは抑制されて平坦化したことから2つのネットワークが完全に断片化したと考えられた.一方,エストロゲンを前処置してから同様の実験を行うと,ヒストグラムのピークは完全には抑制されず,エストロゲンがデスフルランの作用を減弱した可能性が示唆された. 結論:女性ホルモンは神経ネットワークにおよぼす全身麻酔薬の作用を減弱させる可能性がある.
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Remarks |
1846年ボストンのマサチューセッツ総合病院において,Mortonにより世界で初めてエーテルによる全身麻酔が施行されてから170年余が経過したが,全身麻酔のメカニズムには依然不明な点が多い.しかしながら,近年ではパッチクランプ法や遺伝子工学などの分子生物学的手法を駆使した解析も進み,麻酔の迷宮の一端が解き明かされようとしている.麻酔薬の作用機序仮説について,我々の研究成果を中心に紹介したい.
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