2019 Fiscal Year Research-status Report
高齢者の術後神経・認知機能低下に及ぼす骨格筋量・マイオカインの影響
Project/Area Number |
19K18276
|
Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
村上 千晶 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 助教 (70825877)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 術後神経・認知機能障害 / 高齢者 / マイオカイン / 骨格筋量 |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢患者における頻度の高い術後合併症の1つに術後神経・認知機能異常があるが、高齢化が進み手術・麻酔を受ける患者の年齢が上昇している現代、その予防は重要な課題である。原因の1つに脳内炎症が考えられている。炎症性サイトカインは人体の様々な内分泌器官から分泌されるが、近年、体重の40-50%を占める骨格筋も生理活性因子(マイオカイン)を分泌することが分かっている。本研究では、術後神経・認知機能異常の発症とマイオカイン分泌量の関係および骨格筋量の関係について、臨床的見地から検討した。 75歳以上の予定手術を受けた患者を対象に術後せん妄(postoperative delirium:POD)あり群となし群の2群に振り分け、2群間で術前術後のマイオカイン分泌量および骨格筋量の関係について検討することにした。認知症やPODの既往がある患者は対象から除外した。マイオカインは患者血清中のIL-6、IL-10、IL-1β、TNF-α、BDNF、IGF-1、Irisinとし、術後神経・認知機能の評価にはConfusion Assessment Methodを使用した。術後神経・認知機能の観察期間は術後14日目までとし、マイオカインは術前、術後1日目、3日目、7日目、14日目、骨格筋量は術前、術後7日目、術後14日目に測定した。 POD群あり群となし群で、いずれの測定ポイントにおいてもIL-6、IL-10、IL-1β、TNF-α、BDNF、IGF-1の分泌量に有意差は認めなかった。また、骨格筋量に関しても2群間で有意差は認めなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
術後神経・認知機能障害の発生率は10~50%と幅広く報告されているが、当院でのPOD発生はそれほど多くなくPODあり群となし群の症例数に偏りが出た。また測定するマイオカインの種類はこれまでの報告を参考に選択したが、測定項目によっては正確な測定値を算出できないものがあった。そのため現時点では2群間での比較が十分ではなく、上記の進捗状況とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
術後せん妄の発生数がそれほど多くないため、PODあり群となし群での比較を行うためにはさらなる症例数が必要である。当初は整形外科手術を対象に検討する予定だったが、引き続き75歳以上の患者を対象に幅広く検討し症例数を増やす。術後神経・認知機能障害のリスクファクターである認知症やPODの既往がある患者は対象外としていたが、これらの患者も対象とし、PODとマイオカインの関係および骨格筋量の関係について検討する。 また、血清中のマイオカインは種類により正確な測定値を算出することが困難であることが分かった。測定項目を増やし、その中で確実に測定可能と考えられる項目を検討する。測定は現在外部委託しているが、その方法についても再検討する。
|
Causes of Carryover |
初年度に体成分分析装置の購入を検討していたが、学内の物品使用が可能となりその必要がなくなった。そのため次年度使用が生じている。今年度は症例数の増加と測定するマイオカインの項目数増加により、検査に必要な費用が当初計画していたものよりも大幅に増加する見込みである。そのため、その費用に充てる予定である。
|