2020 Fiscal Year Research-status Report
δオピオイドの情動回路における機能解析と慢性疼痛治療への応用
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19K18279
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
小笠原 治 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 研究員 (10791147)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 神経障害性疼痛 / 島皮質 / δオピオイド |
Outline of Annual Research Achievements |
坐骨神経の一分枝を残し他分枝を結紮切離することにより、残存神経領域に神経障害性疼痛を生じさせたSpared Nerve Injury(SNI)マウスを作成した。このSNIマウスの、低下した疼痛閾値が、δオピオイドの脳内作用によって回復(閾値上昇)することを、δオピオイドの脳室内投与後の痛み行動学的試験(von Freyテスト)で確認した。次に、その効果が脳の情動回路と呼ばれる領域によって引き起こされることを確認するべく、脳室内投与(脳全体に作用する)ではなく、情動回路の一部とされる島皮質、前頭前皮質領域に限定して微量注入し、行動学的試験を行ったところ、前頭前皮質領域では回復を認めず(これは別グループによる既存の研究結果と異なるが、標的が小さく本研究代表者らの微量注入技術が未成熟であったことが理由かもしれない)、島皮質領域に注入したときにおいてのみ薬物濃度依存的な回復反応を認めた。また、SNIマウスの脳MRI画像を用いた情動回路の解析においても、島皮質はSNIマウスの情動回路の一部として有力とみなされた。 また、上記の変化が情動回路の機能変化によっても起こることを確認するため、デザイナー受容体を用いた特異的活性化または抑制をすべく、遺伝子改変マウスをかけ合わせ、目的に適うマウスの作成、安定供給を図っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の蔓延により、研究業務ではなく主体である臨床業務の量が増えていること。 病院内臨床業務を行う私が、病院外の研究室人員と近距離活動を行うことは現在の社会通念上困難であり、研究活動における連携が取りづらいこと。
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Strategy for Future Research Activity |
上記薬物効果が、δオピオイド受容体拮抗薬で打ち消されること、他のオピオイド(μ、κ)受容体拮抗薬で打ち消されないことを確認する。 また、それが島皮質の機能変化によっても起こることを確認するため、デザイナー受容体を用いた特異的活性化または抑制を行い、行動学的解析によって評価を行う。 並行して、麻酔マウス脳ではなく、無麻酔・通常行動中のマウスの脳内変化をリアルタイムに解析すべく、カルシウムイメージング技術を用いた脳内情動回路の解析により、行動学的試験の結果と情動回路の変化をリアルタイムでとらえ関連付ける試みを行う。
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Causes of Carryover |
全体的な研究の遅れにより、予定された内容が次年度に持ち越されていることが理由である。その内容とは、SNIモデルマウスへのδオピオイド投与の効果が、δオピオイド拮抗薬やμ・κオピオイド拮抗薬によりどう変化するかを確認すること、そのためにそれら拮抗薬の購入が必要である。遺伝子改変マウス作成と、ライン維持費用が必要である。また、カルシウムイメージング技術確立のための機材購入費などに使用する予定である。
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