2021 Fiscal Year Research-status Report
血小板機能温存を重視した新たな希釈式自己血輸血法の確立
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19K18293
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川本 修司 京都大学, 医学研究科, 助教 (80766668)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 希釈式自己血輸血 / 血小板 / ポリオレフィン / 塩化ビニル / 血小板機能 / ガス透過性 / 冷蔵保存 / 常温保存 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は血小板濃縮製剤の保存方法に基づいた、ポリオレフィン製バッグを用いた新しい全血保存法が、従来のポリ塩化ビニル製バッグを用いた方法よりも血小板凝集能の維持に有効であるかどうかを検討した。結果、ポリオレフィン製バッグ保存では、ポリ塩化ビニル製バッグに比べ、ADP誘発凝集率を2倍以上に維持し、血小板活性化マーカーであるP-セレクチンの発現も有意に抑制した。これらの結果は、ポリオレフィンの高いガス透過性により、攪拌の有無にかかわらず、PCO2が低下し、高いpHが維持されたことに起因すると考えられる。また、血小板数および赤血球数については、保存方法による有意な変化は認められなかった。以上の結果から、ポリオレフィン製バッグを用いた希釈式自己血輸血法は、従来法と比較して止血機能向上に有利であることが示唆された。
また、我々は4℃で6時間の冷蔵保存をおこなった希釈式自己血輸血法では、22℃常温保存時にくらべて血小板機能を含む止血能にどのような変化を与え、止血能の向上に寄与できるのかin vitroにおいて検討をおこなった。結果、冷蔵保存では常温保存より高いADP誘発凝集能を維持でき、血液粘弾性検査においては、冷蔵群ではADP-MAは高く、ADP-inhibitionは低く維持され、冷蔵保存でADP刺激に対する血小板の反応性を高く維持できることが示された。さらに、保存による血小板劣化を示すマーカーであるplatelet factor 4とβ-thromboglobulinは、常温保存では著増したのに対して、冷蔵群で採血時と同等のレベルに抑えられた。以上から、希釈式自己血輸血法における6時間、4℃冷蔵保存では、血小板活性化による血小板機能劣化を抑えつつ、従来行われてきた常温保存時より高い血小板凝集能を維持でき、止血能向上につながる可能性があることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新たな希釈式自己血輸血の方法として、ポリオレフィンバッグを用いた振盪保存が、ポリ塩化ビニルを用いた静置保存よりも血小板機能を維持できる可能性があることを示し、論文化することできた。 Effects of whole blood storage in a polyolefin blood bag on platelets for acute normovolemic hemodilution. Sci Rep 11, 12201 (2021). https://doi.org/10.1038/s41598-021-91725-y
また、希釈式自己血の4度6時間の冷蔵保存が血小板活性化による血小板機能劣化を抑えつつ、従来行われてきた常温保存時より高い血小板凝集能を維持でき、止血能向上につながる可能性があることをしめし、2021年ヨーロッパ集中治療医学会(ESICM LIVES 2021)にて発表を行い、現在論文化を進めている。以上から、おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
我々が考案したポリオレフィンバッグによる保存、および冷蔵による保存を行なった希釈式自己血輸血を実際に臨床現場でも使用し、止血能向上に寄与できるかを検討していきたいと考えている。特に大量出血のリスクの高い肝臓切除症例において、新たな希釈式自己血輸血法が術中の出血量軽減、止血能向上に寄与することで、輸血量削減だけはなく、術後の肝不全発症率の軽減にも貢献できるか倫理委員会へ申請の上、臨床研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
一部海外からの輸入品で新型コロナウイルス感染拡大により購入できないものがあった。 旅費に関しても、新型コロナウイルス感染拡大により参加予定としていた学会がweb開催に変更されるなどしたため出張が不要となったことが原因である。
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Research Products
(7 results)