2019 Fiscal Year Research-status Report
線維芽細胞を用いた悪性高熱症の低侵襲的診断法の確立
Project/Area Number |
19K18298
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
近藤 隆志 広島大学, 病院(医), 助教 (20711774)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 悪性高熱症 |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性高熱症は主に麻酔薬により誘発される致死的な筋疾患であり、主に骨格筋細胞内の1型リアノジン受容体の遺伝子変異により生じるが、機能診断のために必要な筋生検は侵襲が大きく、特に小児においては全身麻酔が必要となるため検査を行うことが困難な実態にある。 本研究は、悪性高熱症疑いの患者皮膚から培養した線維芽細胞から分化させた筋細胞を用いる低侵襲診断法を確立し、遺伝子情報の収集および病態の解明を進めることを主目的としている。線維芽細胞から分化させた筋細胞を用いた機能解析は現在実用化されておらず、この診断法が確立すれば、従来の筋生検を必要とする検査よりも患者に与える侵襲を軽減することができ、検査が従来よりも普及することが期待される。 研究方法としては、患者皮膚からの線維芽細胞培養、線維芽細胞から筋細胞への分化誘導、作成した筋細胞による機能解析の3つのプロセスに大きく分けられるが、これらを段階的に進めていくことで最終的に筋生検を必要としない皮膚を用いて行う低侵襲的検査法を確立する計画である。 今年度は、実験系を確立するために購入した正常ヒト線維芽細胞を使用して機能解析を試みるとともに、悪性高熱症の確定診断のための機能検査の一つであるCarcium induced carcium release(CICR)検査を受ける患者から皮膚を採取して線維芽細胞の培養を行った。培養した線維芽細胞に、線維芽細胞を筋芽細胞、筋管細胞を経て骨格筋細胞へと分化誘導する転写因子(MyoD1)を組み込んだ遺伝子発現ベクターを導入することで骨格筋細胞に分化させた後、作成した骨格筋細胞に対してカルシウム感受性試験を行う予定であったが、細胞分化培養の過程で細胞死を起こしたために機能解析に至らなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、筋生検を行う際に同時に採取した患者皮膚から線維芽細胞を採取して培養し、培養した線維芽細胞を筋芽細胞に分化誘導する遺伝子導入試薬MyoD1により骨格筋細胞に分化させて機能解析を行うことを目標とした。しかし、悪性高熱症疑いで筋生検を行う症例がもともと少ないこともあり患者1名の皮膚しか確保できなかったことに加え、採取した皮膚から線維芽細胞を継代していく上で十分な数だけ培養することができなかった。それと並行して、実験系を確立するために購入した正常ヒト線維芽細胞を使用して同様の実験を行ったが、骨格筋細胞まで分化させていく過程で細胞死を起こしたために現時点では機能解析を行える段階に至っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も引き続き正常ヒト線維芽細胞による実験系の確立を進めるとともに、患者皮膚からの細胞培養を試みていく。細胞培養過程の問題で機能解析が行えていないため、培養条件の見直しを行い安定した筋管細胞培養の確立と機能解析を次段階の目標とする。
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Causes of Carryover |
(理由) 物品費が当初の見込みより必要なかったため、次年度以降の物品購入に充てることとした。 (使用計画) 細胞培養や遺伝子導入、データ解析に必要な物品を購入する予定である。
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