2021 Fiscal Year Research-status Report
全身麻酔下のVEPモニタリングにおける振幅低下時の最適警告基準の検討
Project/Area Number |
19K18302
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Research Institution | Nara Medical University |
Principal Investigator |
植村 景子 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (10645873)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 視覚誘発電位 / 術後視機能障害 / 警告基準 |
Outline of Annual Research Achievements |
全身麻酔下での視覚伝導路近傍の脳腫瘍摘出術や、眼動脈血流を障害するリスクのある動脈瘤手術は、術後に視野障害や失明などの術後視機能障害が発生する可能性があり、術中視機能評価が非常に重要である。視覚誘発電位(visual evoked potential:VEP)モニタリングは、全身麻酔下でも視機能を評価でき、網膜から大脳皮質視覚野までの視覚路のどこかで発生した視機能障害を検出可能である。そこで、VEPモニタリングで視機能を術中にリアルタイムに評価し、振幅低下時に警告することで、術後の視機能障害を未然に回避できる。しかし、術前(コントロール)と比較して術中VEP振幅が何%低下した場合に術後視機能障害が発生するのかについて調査した報告はなく、各施設独自の警告基準が用いられているのが現状である。 本研究では、術後視機能障害を予防するためのVEP振幅低下の最適な警告基準を設定するために、当施設でVEPモニタリングを併用した脳腫瘍摘出術や脳動脈瘤クリッピング術の患者におけるVEP振幅低下の程度と術後視機能障害発生について検討している。 昨年・一昨年度には、警告基準をVEP振幅50%低下に設定して行った当院の過去のデータを整理し、その結果、VEPモニタリングは感度60.0%、特異度100%、正確度94.4%であり、感度を上げるような警告基準を設定することの必要性を再確認した。 また、症例の中には、重度視機能障害のために術前コントロール波形の測定不可能なものもあり、昨年度は、VEPコントロール波形測定不可能因子の検討も行った。 現在は、これまでのデータから術後視機能障害を予防するためのVEP振幅低下のカットオフ値を算出中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
データは集まっているが、日常診療業務が増えて多忙になっているため、論文作成がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、術中VEP振幅低下の程度と術後視機能障害の関連をROC (receiver operating characteristic) curveを用いて分析し、術後視機能障害を予防するためのVEP振幅低下のカットオフ値を算出中である。この結果が出次第、学会発表と論文作成を行う。 また、同時に検討していた、VEPコントロール波形測定不可能因子の検討についての論文を現在作成中である。 さらに、現在使用されている光刺激装置によって、これまで明確ではなかったVEP波形の早期成分(N30, P40)が非常に高い確率で同定できるようになった。このN30とP40の頂点間距離と潜時を測定分析し、視神経領域の特異的機能評価ができるかどうかについて、検討する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症の流行のため、学会などは全てwebになり、旅費などの経費を使用しなかった。新型コロナウイルス感染症の流行が落ち着けば、今後、学会発表などの旅費、また、さらなるデータ収集のための消耗品(電極など)に経費が必要となる。
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