2019 Fiscal Year Research-status Report
心肺停止後症候群の予後における脳障害の経時的炎症病態と多元的評価
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19K18315
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中村 美穂 金沢大学, 附属病院, 特任助教 (10733818)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 炎症性サイトカイン / 小児 / 心停止後症候群 |
Outline of Annual Research Achievements |
心肺停止は最も重症の病態であり、自己心拍再開を得ても、心停止後症候群(Post Cardiac Arrest Syndrome: PCAS)により救命困難、もしくは社会復帰不可能な状態に陥るため社会復帰率は非常に低い。PCASの予後において最も重要な病態は虚血再潅流による脳損傷であり、虚血後の炎症反応の制御とその後に発症する脳浮腫の軽減が必要である。PCASは重症病態であり、様々な予後予測が行われてきたが、未だに早期に生命・神経学的予後を予測する確立したモデルは不確定であり、神経学的予後を含めた早期の正確な予後予測が望まれている。本研究では、第一にPCASからの早期の予後予測を行うことを目的とする。炎症性サイトカインを含めたバイオマーカーの測定を軸として、これまで解明されていないROSC後数日間のバイオマーカーの超早期の神経細胞障害から脳浮腫発症を含む経時的な炎症病態の推移を解明する。全身性マーカーに加え脳損傷のマーカーであるNSE測定も行う。さらに眼球超音波検査を使用した視神経鞘径(optic nerve sheath diameter: ONSD)の拡大、持続脳波モニタリングも施行し多元的な予後評価を行う。浮腫の前後での炎症病態の変化を明確にすることにより、超早期の神経細胞障害から脳浮腫発症を含む経時的な炎症病態の推移を、眼球エコー、持続脳波モニタリングを併用して継時的に解明することで、PCASにおける早期の予後予測がより正確なものとすることを目的としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年度は「眼球超音波検査によるICP亢進の捕捉と予後」を目標とし、眼球超音波検査によりICP亢進のカットオフ値の測定と並行して予後予測を行う予定であったが、眼球超音波計の安全性が現在臨床的に担保できないことから、本年度は2020年度の「心肺停止後症候群の予後における脳障害の経時的炎症病態と多元的評価」に適切な炎症性サイトカインを再検討することを目的に小児の心停止後症候群とその他疾患における予後予測を目的とした炎症性サイトカインの後方視的検討を行った。2014年から2019年までのICU入室した小児症例で炎症性サイトカインを測定した33例について、血清・髄液のIL-6, IL-8, IL-18, neopterin, TNF-α, IL-1β, IL-10の後方視的検討を行った。死亡例・神経学的予後不良例についてhuman-tau蛋白の上昇が認められた。神経軸索内の微小管結合蛋白質であるhuman-tau蛋白は、近年血清NSEよりも心停止後症候群における神経学的予後を予測するための有益なバイオマーカーとして報告されている。今回の検討は小児であったが、同様の結果を示したことからも次年度「心肺停止後症候群の予後における脳障害の経時的炎症病態と多元的評価」を行う上で、早期の炎症性病態・神経細胞障害を予測することを目的に、human-tau蛋白についての測定を追加することは有意義であると考えた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究結果に従い、試薬の変更を行う。その後当初の計画に則って研究を推進する。本年度の研究内容を一層深めつつ、さらなる一般化を図る。その後学会発表や論文化を推進していく。
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Causes of Carryover |
本年度に眼球超音波検査によりICP亢進のカットオフ値の測定と並行して予後予測を行う予定であったが、眼球超音波計の安全性が現在臨床的に担保できないことから、レンタル費用分として計上していた費用に関して未使用額が生じた。次年度human-tauについての測定を行う予定であり、未使用額はその試薬などに充てることとしたい。
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