2021 Fiscal Year Annual Research Report
TLRアゴニストを利用したマウス敗血症モデルの拡張と免疫抑制状態の解析
Project/Area Number |
19K18336
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
関 玲子 帝京大学, 医療技術学部, 講師 (30527495)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 炎症 / TLR / 肝障害 / 脂質代謝 / 敗血症 / トレランス |
Outline of Annual Research Achievements |
敗血症症例では脂肪酸(FA)β酸化抑制による臓器のエネルギー不足が多臓器不全の誘因の一つと考えられています。私たちは、脂肪代謝によって得られるエネルギーと免疫応答の強さの関係について、免疫トレランス誘導モデルマウス[Seki(2017)]を用いて、血清中脂質や肝臓の脂質代謝関連遺伝子の発現量の変化を評価し検討をしました。その結果、免疫応答が弱いトレランス状態のマウス肝臓では脂肪酸の取り込みに関するCD36遺伝子発現が著しく増加している(脂質代謝が亢進している可能性)を見い出しました。 また、菌感染炎症が軽度ながら肝不全により障害が増強されてしまう病態についても、CpG-DNA/D-gal投与マウスで同様の検討を行い、薬剤あるいはPBS投与両群ともに腹腔内注射後5-8時間に血清トリグリセリド(TG)が著減後、24時間では通常の2-3倍ほどへ再び大きく増加することを見いだしました。肝臓のCD36遺伝子発現はTG減少時には約10000倍に増加し、血中コルチコステロン値はほぼ一定でした。これらの結果から、採血といったストレスに対する防御反応として、ホルモンではなくLPLの血中遊離が誘導され、VLDLのTG加水分解、CD36を介した肝臓へのFA取り込み増加と再エステル化(VLDL生成)による血中TGの再上昇という過程が誘導されたものと考えました[Nishizawa, Seki (2022)]。 疎水性の強い微生物由来のTLRリガンド等の炎症惹起物質のクリアランスについて、TG濃度増加によってそれが促進されることが報告されています。今回の結果で、薬剤投与により肝障害を伴う群で血清TG値の再上昇の程度が低いものであったことから、肝不全が肝臓の脂質代謝の変化を抑え生体防御の脆弱化をもたらす、つまり、感染初期の自然免疫系応答が不十分となり感染が重症化しやすくなる可能性を明らかにしました。
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