2020 Fiscal Year Annual Research Report
外傷性出血性ショックに起因した多臓器不全におけるHMGB1の作用解明と治療展望
Project/Area Number |
19K18337
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Research Institution | Nippon Medical School |
Principal Investigator |
吉野 由希子 日本医科大学, 大学院医学研究科, 研究生 (80813097)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | HMGB1 / 骨軟部組織損傷 / 外傷 / ショック / 外傷後臓器傷害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、外傷と出血のtwo-hitにより生じた各種炎症性サイトカインが、その濃度依存性に臓器障害を誘導しうることを時系列で証明したものである。マウスの骨軟部組織をミンチしたもの(以下TBX)を同種マウスに移植する骨軟部組織損傷モデルに出血性ショックを加え、作成24時間後のマウスの血漿中の炎症性メディエータを測定した。①コントロール群、②出血性モデル群、③出血性外傷性モデル群(骨軟部組織移植群蘇生処置前)、④出血性外傷性モデル群(骨軟部組織移植群蘇生処置後)に分けてデータを採取した。研究前後の動脈血液ガス分析の結果を比較し、実験中にラットがショック状態に至っていたことを確認した。観察期間(蘇生後1時間、3時間、6時間、12時間、24時間)に応じて各臓器を液体窒素処理後、冷凍保存した。
データ分析により、TBX背部皮下移植が、全身性炎症を惹起させることが分かり、さらに関連分子(HMGB1)値と重症度の相関性が示唆された。3、6、12、24時間モデルのうち、出血性ショック単独モデルでは、TBX皮下移植より3時間後から24時間後にかけて、HMGB1濃度は時間と相関してなだらかに上昇した。骨軟部組織障害に出血性ショックを合併したモデルでは、 HMGB1濃度はTBX皮下移植6時間後にピークを示し、その後なだらかに減少した。さらに、体重あたりのTBX容量が多いほど、容量依存性にHMGB1濃度の上昇が見られた。体重あたりのTBX容量15%モデルでは、容量10%モデルの約2.5倍のHMGB1濃度上昇を示した。体重あたりのTBX重量20%以上のTBXを皮下に移植したラットは、死亡に至ることがわかった。重量20%以上ではHMGB1が過剰に産生されてしまい、致死的変化をもたらしたと考えられた。
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