2019 Fiscal Year Research-status Report
Regulation of mRNA translation machinery in influenza virus infection
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19K18342
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Research Institution | National Institutes of Biomedical Innovation, Health and Nutrition |
Principal Investigator |
椎森 仁美 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 ワクチン・アジュバント研究センター, プロジェクト研究員 (20833891)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | インフルエンザウイルス / 遺伝子発現制御 / 翻訳制御 / 宿主因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
インフルエンザウイルス感染症は、救命治療を必要とするほどに重症化することもある。一旦重症化してしまうと有効な治療法がないことから、新規の作用機序を持った治療法の開発が必要である。しかしながら、インフルエンザの重症病態が形成される分子メカニズムは明らかになっておらず、とりわけ、宿主の翻訳制御機構に関しては不明の点が多い。本研究では、インフルエンザウイルス感染におけるmRNA発現・翻訳状態の変化をRNA sequencing解析、Ribosome profiling解析による網羅的な解析を行っている。さらに、インフルエンザウイルス感染時に翻訳状態が変化するmRNA群と、それらを制御する宿主翻訳制御因子とその作用機序を明らかにすることにより、インフルエンザウイルス感染症の病態における翻訳制御機構の役割を明らかにすることを目指し、解析を進めている。 本年度は、インフルエンザウイルス (A/Puerto Rico/8/1934 H1N1) に感染させた細胞において、RNA sequencing解析、Ribosome profiling解析を行い、宿主細胞のmRNA発現状態、また翻訳状態がどのように変化しているか解析を行った。その結果、mRNAレベルでは、これまでの知見と一致して、ウイルス感染に応答してインターフェロン等の感染防御に働く因子群の発現の上昇が検出された。また翻訳レベルでは、免疫応答遺伝子やRNAプロセシング等に関与する遺伝子群の翻訳状態が上昇していた。現在、翻訳状態が変化していた遺伝子群について、どのような配列的特徴を有しているか、解析を進めている。 今後、翻訳状態が変化していた遺伝子群に関して、その制御因子や制御機構について解析を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度の研究計画においては、インフルエンザウイルス感染に伴い宿主ならびにインフルエンザウイルスmRNA発現状態、翻訳状態がどのように変化するのか、RNA sequencing解析、Ribosome profiling解析により明らかにした。研究計画では、翻訳状態が変化するmRNAの配列的特徴の同定や、同定した配列の相互作用因子の探索を計画していたが、まだ特徴的配列・相互作用因子の同定には至っていない。以上の状況から、研究は当初の計画からやや遅れていると考えるが、今後さらなる解析を進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず、翻訳状態が変化するmRNAが持つ特徴・制御因子の同定を行う。これまでの解析で同定した翻訳状態が変化するmRNAの配列的特徴、また、コードするタンパク質の機能的特徴があるか明らかにする。同定した特徴的な配列を持つレポータープラスミドを作成・その発現の変化をインフルエンザウイルス感染後、経時的に観察し、翻訳制御を受ける条件となるシス配列を同定する。さらに、同定したシス配列を持つRNAとどのような因子が相互作用するのか解析を行う。また、non-coding RNAの関与の可能性についても検討する。 次に、上記の解析で明らかにしたインフルエンザウイルス感染において機能する翻訳制御因子の作用機序、さらに病態との関連を明らかにする。まず、同定した宿主翻訳制御因子の発現、局在が、インフルエンザウイルス感染に伴い変化するのか解析する。さらに、制御因子ノックアウトまたはノックダウンし、ウイルスの増殖能、感染時におけるmRNA翻訳状態の変化を解析する。また、同定した翻訳制御因子の相互作用因子についても明らかにする。 さらに、同定した制御因子のノックアウトまたは機能欠失マウスを作成する。野生型マウス、ノックアウトまたは機能欠失マウスにインフルエンザウイルスを感染後、体重変化、生存率、ウイルスの増殖能を比較する。さらに肺の組織標本を作製し、マウスの肺の病理所見を比較、検討する。 以上の解析結果を元に、インフルエンザウイルス感染における宿主翻訳制御機構と病態との関連について統合的に理解する。
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[Book] ファルマシア2019
Author(s)
今井 由美子, 椎森 仁美, 市田 悠
Total Pages
1105-1110
Publisher
公益社団法人日本薬学会