2019 Fiscal Year Research-status Report
水素ガス吸入療法による薬剤性肝障害に対する新規治療法の開発とそのメカニズムの解明
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19K18359
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
政所 祐太郎 鹿児島大学, 鹿児島大学病院, 医員 (40794061)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アセトアミノフェン / 水素ガス / 肝障害 / グルタチオン |
Outline of Annual Research Achievements |
アセトアミノフェン肝障害に対する水素ガス吸入療法の有用性を検討し、さらに、いまだに不明な点が多い水素ガスの臓器保護メカニズムの解明を様々な代謝経路を有する肝臓で研究することで明らかにし、水素ガス吸入療法を薬剤性肝障害の新たな治療法として確立するべく、実験を行なっている。 現在、我々はC57BL6マウスを使用し、16時間の絶食処置後、各群腹腔内注射を施行(アセトアミノフェンは300mg/kgを基本とした。対照群は生食投与)。その後ガスを専用のボックスで2時間吸入させ、下大静脈から採血を行い、各パラメータを測定した。測定項目はALT,グルタチオン(GSH)を測定し、また肝臓を採取し、肉眼的評価を行なった。 水素ガス投与群はコントロールガスや非ガス投与と比べてALTは低下する傾向にあったが、統計学的有意差は認められなかった。グルタチオンの還元型であるGSHの量は水素ガス投与群で維持される傾向にみえたが、コントロールガスやガス非投与群と比べて統計学的有意差はみられなかった。GSHが保護されていることは還元型グルタチオンGSHから酸化型グルタチオンGSSGへの酸化が抑制されていることを意味しており、水素ガスの還元作用による効果があることが示唆される。 肝臓の肉眼的評価では肝障害の程度がある程度予測できるが、水素ガス吸入群でやや程度が軽い印象を受けた。この組織学的評価をするまでには本年度では至らなかった。 また、活性酸素発生に関してMDA、グルタチオンなどの評価を行い、各群に差があるかを評価していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
現在の実験条件でのALTの値やGSHの測定や活性酸素の測定、組織学的評価を行うことを予定していたが、そこまで達成することができなかった。その理由として実験を継続するうちにモデルの肝障害の程度、重症度のばらつきが発生したことがあげられる。 投与するアセトアミノフェン濃度、水素ガス吸入の時間やタイミングなどを条件検討は事前に行っていたが、今回の条件では個体によって受ける肝障害に差があるのか、強い肝障害が起こるものもいればあまり肝障害が起こらないものもいるため、今回のガス吸入の評価をするのに十分なモデルではないと判断せざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
絶食時間、アセトアミノフェン投与濃度、投与方法(腹腔内注射、経口摂取など)等を見直し、アセトアミノフェン肝障害モデルの確立を行う。また水素ガスの投与方法に関しても検討していく。現在アセトアミノフェン投与後2時間のガス吸入を実施しているが、先の研究において肝虚血再灌流モデルに対する水素ガス吸入実験では再灌流前から吸入開始されていることや、アセトアミノフェン肝障害に水素水を投与した実験では水素水を複数回投与されており、吸入開始時間の調整や回数の調整で効果を検討していく必要がある。 モデルが確立したのち、水素ガス吸入効果の指標としてHMGB1やヒストンといった組織破壊に伴う因子(DAMPs; damage associated molecular patterns )の測定も検討していく。
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Causes of Carryover |
実験計画の変更が生じたため、検査の実施が予定通り遂行できなかったため。 使用計画は検査試薬の購入に使用する予定である。
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