2019 Fiscal Year Research-status Report
敗血症時の各臓器におけるNETsの関与と新規治療戦略
Project/Area Number |
19K18369
|
Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
加藤 由布 藤田医科大学, 医学部, 特別研究員 (50773412)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | NETs / 敗血症 / リコンビナントトロンボモジュリン(rTM) / 臓器障害 / 多臓器不全 / DIC |
Outline of Annual Research Achievements |
敗血症は世界中の国や地域において主要な死因となっており、有効な治療法の確立が急がれている。敗血症とは、細菌・ウイルス・真菌が引き起こす感染症による全身炎症に臓器障害が加わった病態である。重症化し、多臓器不全や播種性血管内凝固症候群(DIC)に移行すると死に至る。多臓器不全の病態として、壊れた組織や炎症細胞から放出される細胞外ヒストンによる内皮細胞の傷害や血小板凝集がその原因ではないかといわれている。近年、好中球の新たな機能であるNETs(好中球細胞外トラップス)が注目されている。NETsは、血小板により活性化された好中球が放出するヒストンやDNAを含んだ網目状の構造物で、病原体を捕捉・殺菌し、病原体が全身に広がるのを防いでいる。重度の感染症では、過度のNETs形成が臓器不全の原因ではないかと考えられている。本研究の目的は、敗血症による過剰なNETs形成が原因で、多臓器不全に移行するのを防ぐのにrTM(リコンビナントトロンボモジュリン:rTM)が有効であることを基礎と臨床の両面から明らかにすることである。本年度は、敗血症モデルマウスの臓器におけるNETsの形成を共焦点レーザー顕微鏡と走査電子顕微鏡にて確認した。rTMを投与した敗血症モデルマウスの臓器内でのNETsの形成は少ないことが明らかとなった。過剰なNETs形成は血管内皮細胞を傷害し、多臓器不全を引き起こす。rTMがNETsの形成を抑制したことにより、多臓器不全を防ぎ、臓器でのNETs形成を抑制したことが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、ほぼ研究計画どおりに進行している。マウス敗血症モデルの臓器をNETsの構成物質であるDNA(DAPI)、抗ヒストン抗体、抗MPO抗体を用いて免疫蛍光染色を行った。共焦点レーザー顕微鏡で観察後、金属コーティングを行い、共焦点レーザー顕微鏡で観察した同一部位を走査電子顕微鏡でNETsの観察を行うことに成功した。次年度以降の研究計画にも大幅な変更は必要ないと考えていることから、概ね順調と考えた。
|
Strategy for Future Research Activity |
血管内皮障害がどの部位で起きているか確認するために、各臓器をランタン染色し、電子顕微鏡でグリコカリックスの観察を行う。また、血清中のNETs形成量の定量的測定を行う。
|
Causes of Carryover |
今年度は、当初予定していた血液中のNETsの定量的測定が行えなかったことや新たに購入する抗体が必要なかったことが次年度使用額が生じた理由として挙げられる。 次年度は、新たに大学に入った走査電子顕微鏡を用いて臓器の血管内のグリコカリックスを観察したいと考えている。抗体・試薬・機器使用料を当初の計画に加えて計上する。また、結果の英語論文化による英文校正費用としての使用を計画している。
|
Research Products
(6 results)