2019 Fiscal Year Research-status Report
中枢神経原発悪性リンパ腫の患者由来細胞株を用いた治療標的の探索
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19K18398
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
三宅 勇平 横浜市立大学, 附属病院, 助教 (80837302)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 中枢神経原発悪性リンパ腫 / 患者由来細胞株 / NF-kB |
Outline of Annual Research Achievements |
NF-kB経路を標的とした中枢神経悪性リンパ腫(PCNSL)の治療法の開発を目的とした。患者より採取した腫瘍細胞を用い、患者由来細胞株を作成した。免疫不全マウスの大脳に移植し、脳腫瘍マウスモデルを作成した。複数のこれらのモデルを用い、NF-kB経路のシグナルであるBTKの阻害薬であるIbrutinibについて、薬剤感受性の相違と細胞株の遺伝子発現の相違などを検討し、ibrutinibの耐性について検討した。細胞株によってibrutinubに対する薬剤感受性が異なったが、これは従来、耐性因子として報告されているCARD11遺伝子プロファイルに依存しなかった。Ibrutinib感受性を示した細胞株においては、ウェスタンブロットにて、NF-kB経路の下流のkey signalであるRelA/p65のリン酸化の低下がみられた。一方、もう一つのkeyと報告されているPI3K pahtwayのシグナルはIbrutinib感受性を示さない濃度においても低下がみられた。PI3K pathwayと細胞毒性の関係を検証するために、AKT阻害剤であるGDC-0068を使用すると、PI3K pathwayのシグナルが下がるにも関わらず、細胞毒性は見られなかった。これらの細胞株においてRelA/p65の低下は認められなかった。よって、RelA/p65が重要なシグナルと考え、RelA/p65をshRNAによりknockdownした。その結果、knockdownが得られた細胞株では、コントロールと比べ細胞活性が有意に低下した。より効率よくRelA/p65のリン酸化を抑制する薬剤を検証したところ、同様の機序を持つ2つの薬剤が発見された。これらの薬剤はすべての細胞株において低濃度で強力にRelA/p65のリン酸化を抑制し、PCNSL細胞株の細胞活性を減衰させ、有望な治療薬であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究材料は患者由来細胞株であり、新規の細胞株樹立は患者数に依存する。稀少疾患であり、本年は患者数が少なく新規細胞株が3例のみであった。しかし、すでに樹立してある10例の細胞株を用いて滞りなく研究が進行できた。半数以上の細胞株の遺伝子解析は完了した。薬剤感受性試験については、すべての細胞株で施行した。遺伝子強制発現に関しては、shRNAによるKnockdown効率が悪く、6例でのみ検証できた。DNAメチル化解析は行えていない。新規治療の開発について、強力にPCNSL細胞株の細胞活性を抑制する薬剤が同定され、PCNSLマウスモデルを用いて、in vivoの検証を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在PCNSLに対し臨床応用されている新規薬剤としてBTK阻害薬があるが、報告からも耐性を持つ症例が存在する。本研究にて同定された薬剤は全細胞株に対し細胞毒性を発揮した。今後はBTK阻害薬の耐性機序を示すとともに、同定された薬剤がBTK阻害薬耐性を克服する薬剤であることを証明したい。
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Causes of Carryover |
概ね計画通りとなったが、多少の余剰が生じた。次年度は引き続き、日本脳腫瘍学会、日本脳神経外科学会および日本脳腫瘍病理学会への参加、発表を予定している。計画していたSNO(Society for NeuroOncology)への参加、発表は社会情勢より2020年度は見送った。よって旅費は150千円、また実験補助員に対する人件費として100千円、論文投稿代、英文校正代として100千円を見込んでいる。細胞実験のための各種培地、抗体、試薬、ShRNAなど及び動物実験のためのSCID/Beigeマウスの購入費として、600千円を予定している。
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