2020 Fiscal Year Research-status Report
Efferocytosisを利用した頚動脈狭窄症の脳梗塞リスク診断と分子標的治療
Project/Area Number |
19K18414
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
坂田 洋之 東北大学, 医学系研究科, 非常勤講師 (80722305)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 頚動脈狭窄症 / 脳梗塞 / バイオマーカー / efferocytosis / Mfge8 |
Outline of Annual Research Achievements |
頚動脈狭窄症とは、頚部頚動脈分岐部に動脈硬化プラークによる血管の狭窄を生じ、脳梗塞の原因となりうる病態である。従来の狭窄率による古典的な脳梗塞発症リスク指標には限界があり、最大限の内科的加療にも関わらず脳梗塞に至る症例は少なくない。アポトーシス細胞がマクロファージの貪食により除去される過程をefferocytosisといい、その障害は動脈硬化性病変の進行を引き起こす。Mfge8 (milk fat globule-EGF factor 8)は、マクロファージ上に発現するインテグリンと、アポトーシス細胞上に提示されるホスファチジルセリンの両者に結合し、2つの細胞を橋渡しするbridging moleculeである。本研究の目的は、efferocytosisの過程で橋渡しを行うMfge8に着目し、脳梗塞発症リスクの正確かつ簡便な診断法を確立することである。頚動脈ステント留置術を施行する患者から血清検体を採取し、無症候性病変と症候性病変のMfge8値について比較検討を行う。症候性病変ではefferocytosisが破綻し、血清Mfge8値が低下しているとの仮説を立てた。 本年度までに、頚動脈ステント留置術を施行した37症例(無症候性病変: 17症例、症候性病変: 20症例)から血清検体を採取した。ELISA法で両群間の血清Mfge8値について解析を行った。興味深いことに当初の仮説に反して、症候性病変でMfge8値の有意な高値を認めた(無症候性病変: 491.63±49.44 pg/ml、症候性病変: 592.88±40.82 pg/ml、P < 0.05)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
頚動脈狭窄症を有する患者から順調に血清検体を採取し、当初予定していた検体数を確保できた。ELISA法でMfge8値の解析を予定通りに行うことができた。現在並行して、同一検体に対して他のefferocytosisに関わる分子の解析を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の仮説に反して、症候性病変でMfge8値は高値を示した。冠動脈狭窄等の他の動脈硬化性病変の知見と相反する結果であり、興味深い。不安定な頚動脈病変で血清Mfge8値が上昇する原因について、2型糖尿病の合併等の多角的な観点から検討する予定である。また、同時並行的にefferocytosisに関わる他の分子についても解析対象を広げており、脳梗塞発症リスクの正確かつ簡便な診断法を確立する。
|
Causes of Carryover |
購入したELISA kitが予定額よりも安価に購入可能となり、次年度使用額が生じた。 翌年度に新たなELISA kitの購入に充てる予定である。
|