2019 Fiscal Year Research-status Report
エクソソームを介した神経膠腫における環境整備機構の解明と新規治療の開発
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19K18419
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
筒井 泰史 金沢大学, 医学系, 協力研究員 (00722042)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 神経膠腫 / 細胞外小胞 / 微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
悪性神経膠腫を治療する上で、腫瘍悪性形質の維持に関わる分子メカニズムの解明が課題である。われわれは悪性形質維持に寄与する微小環境を整備するメカニズムとしてマイクログリアの活性化に着目している。その中でも悪性神経膠腫が分泌するエクソソームを含む細胞外小胞を介したマイクログリアへの影響を解析した。 これまでの研究結果から悪性神経膠腫細胞から分泌される細胞外小胞の量を減少させることで、細胞の腫瘍形成能が有意に抑制されることを示している。そこで今回は悪性神経膠腫細胞の細胞外小胞分泌量を減少させることが、腫瘍の微小環境に影響を与えているかどうかをin vivo実験で検証した。野生株と細胞外小胞分泌抑制株を用いて脳腫瘍モデルマウスを作成し、腫瘍周囲のマイクログリアの活性化や微小血管新生について免疫染色をおこない解析した。その結果、腫瘍からの細胞外小胞の分泌量を減少させることで、腫瘍周囲のマイクログリアの活性化が抑制され、血管新生も有意に減少することが示された。 また細胞外小胞による効果が分泌量だけでなく、小胞内容物によっても違いがでることを検証するために、悪性神経膠腫細胞と正常神経膠細胞のそれぞれから抽出した細胞外小胞をマイクログリアに取り込ませ、それを可視化することで評価した。結果はマイクログリアへの取り込み量には有意な差はみられず、それにより腫瘍特異的なマイクログリア活性効果は小胞内容物による違いも大いに関係することが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では悪性神経膠腫の微小環境整備に関与する新たな分子の解明を目的としたが、先行研究結果の検証とそれに伴う追加実験をおこなった。また、協力研究員となったことで研究に費やす時間が大幅に減少したため、研究の進捗は当初の予定よりも遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は先行研究で解明した分子による微小環境への影響を詳細に評価し、さらなるin vivo実験も必要になると考えられる。また、細胞が分泌する細胞外小胞が腫瘍悪性形質へ与える影響が、細胞外小胞に特異的な効果であることを示すための実験も追加予定である。その後、当初の研究予定である新規分子の検索をおこなう方針としている。新規分子については複数の細胞株から精製した細胞外小胞のタンパク質量分析結果をすでに所有しており、それをもとに実験をすすめる方針である。
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Causes of Carryover |
実験内容が当初の計画と違い先行実験の検証を行ったことから、購入した実験動物が少なく、新規の試薬や消耗品の購入が最小限に抑えられたことがある。それに加え、研究時間の減少により予定よりも研究の進捗状況が遅れていることから、次年度使用額が生じた。翌年度にはこの次年度使用額と翌年度分助成金とを合わせ、追加の検証実験とin vivo実験を施行する予定であり、さらには当初の予定であった他分子の検索をおこなうための多くの新規の試薬の購入を予定している。
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