2020 Fiscal Year Research-status Report
神経栄養因子高発現間葉系幹細胞移植によるALS治療の試み
Project/Area Number |
19K18429
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
本多 直人 鳥取大学, 医学部, プロジェクト研究員 (10838486)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 間葉系幹細胞 / MSC / 移植 / マイクログリア / マクロファージ |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究で明らかになっているHAC-MSCシートへのマイクログリア及びマクロファージの浸潤がHAC-MSCシートの生着に関与するかを明らかにするため、マイクログリア・マクロファージを選択的に除去するクロドロン酸内包リポソーム投与下でHAC-MSC移植を行い、InVivoイメージングシステムを用いて同一個体でのHAC-MSC生着の推移を移植後14日目まで非侵襲的に評価した。移植後7日目においてクロドロン酸内包リポソーム投与群がコントロールと比較して有意に高い細胞由来の発光を示した。一方で最長生着期間の延長は認められなかった。このことから、短期的にはマイクログリア・マクロファージの存在がHAC-MSCシートの生着に対して負の働きをする可能性が示されたが、詳細な因果関係はまだ明らかにできていない。 また、切片上で免疫組織化学によってマイクログリア・マクロファージの活性化をiNOS陽性M1(組織障害的)とArg1陽性M2(組織保護的)に分けた。HAC-MSCの近傍では特にM2フェノタイプに活性化しており、その数もSham手術と比較してはるかに多かった。このことからHAC-MSCの存在がマイクログリア及びマクロファージの遊走を亢進させること、M2への活性化を誘導することが示唆された。ALSモデルマウスにおいては変異型SOD1によって活性化されたM1様マイクログリアが病態の進行に寄与すると考えられている。これまでの研究でHAC-MSC移植によるALSモデルマウス治療効果は神経栄養因子による神経細胞死の抑制と考えてきたが、マイクログリアに対する作用機序も存在するか検証していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
マウスに対する移植実験において想定よりも多くのマウスが死亡した。解析するための数が不足したため追加で実験を行った。また、移植細胞は脳よりも頭蓋骨に対する接着親和性が高く、従来までの組織採取法では現実に即した移植部の切片を作成できていない事が判明した。この問題を解決するため骨を含むサンプルを脱灰後骨ごと薄切する方法に変更した。
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Strategy for Future Research Activity |
HAC-MSCはHACシステムを用いてHGF,IGF-1,GDNFの3因子を発現しているが、これらは当初の目的では全て神経細胞の細胞死を抑制させることを目的として導入された。しかし、実際には移植後Sham手術と比較して大量のマイクログリア及びマクロファージの浸潤を認めたことから、グリア細胞への影響も無視できなくなった。HGFはマクロファージの遊走能を亢進させるとの報告があり、MSC自体にM2へ活性化させるとの報告があることから、このHAC-MSCが従来の無改変MSCよりも高く組織保護的に働くかを検証する。 ALSモデルマウスではマイクログリアが変異SOD1によってM1フェノタイプに活性化することで病態の進行に関与すると考えられている。HAC-MSC移植がALSモデルマウスに対し一定の生存延長効果を持つことはこれまでの研究から明らかになっているが、神経細胞に対する直接的な効果以外にも作用を及ぼしているかについて検証する。
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Causes of Carryover |
購入を検討していた物品があったが、納品時期が年度内に間に合わないことが判明したため購入時期を見送った。
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