2021 Fiscal Year Annual Research Report
障害海馬での神経幹細胞の枯渇を招かない長期的な神経再生の基礎的研究
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19K18438
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
加瀬 義高 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 助教 (00830655)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 神経幹細胞 / 神経前駆細胞 / 神経新生 / 神経突起 / MPAK / p38 |
Outline of Annual Research Achievements |
最初にp38発現レンチウイルスベクターを作成した。次に、ウイルスベクターを海馬に局所注入する条件検討の実験を行った。目的の部位に注入でき、かつ注入された細胞が生存しているか確かめるために、ffLuc Lentivirusを用いてIVISにて観察した。ウイルスベクターが導入された細胞は生存させることができており、この段階で局所注入の手技としては成功していた。次に実際にp38過剰発現ウイルスベクターを投与したが、問題が生じた。 側脳室のような腔内に注入するのではなく、実質組織に注射で注入すると、傷つけた箇所の炎症を惹起してしまう現象が生じた。実質組織に局所注入する際にはどうしても、組織を壊して針を侵入させることになる。p38は急性期炎症に関与するタンパク質であり、この効果が当初想定していたよりも大きく作用してしまった。ここで研究遂行の戦略を練り直す必要が出てしまった。 そこで我々は海馬にウイルスを直接注入して神経機能の向上を目指すのではなく、化合物をマウスに腹腔内ないしは静脈投与することで海馬の神経機能を維持することを目指した。まずin vitroで、p38を活性化し神経前駆細胞の増殖ないしは神経機能を向上させる化合物の同定を目指した。 ここで注目した化合物が、Streptomyces 属が生成するRK-682である。p38の脱リン酸化酵素の阻害剤として働く。まず我々はこの化合物をニューロンへ添加した際の効果をシャーレ上で検証した。ヒトiPS細胞由来のNS/PCの集合体を作成し、それに、RK-682の添加処理を約24時間施したのちに、ニューロンへ分化させ培養した。すると、細胞の増殖性は変わらなかったが、ニューロンの神経突起が伸長する効果が確認された。 このRK-682を用いた研究を今後アカデミアで安定して継続していくために「神経突起伸長促進用キットおよびその使用」で特許出願を行なった。
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