2019 Fiscal Year Research-status Report
脊柱靱帯骨化症モデルマウスにおける静脈血栓塞栓症発症メカニズムの解明
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19K18449
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
市川 奈菜 弘前大学, 医学研究科, 客員研究員 (70837434)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 脊柱靭帯骨化症 / 静脈血栓塞栓症 |
Outline of Annual Research Achievements |
脊柱靭帯骨化症における静脈血栓塞栓症の発生に関わる因子を調査するため、脊柱靭帯骨化症モデルマウス(以下、ttwマウス)を用いて血液凝固能、管腔形成能、血管形態、血管周囲の間葉系幹細胞の有無の評価を行った。 心臓血を用いた血液凝固能の評価では、8週齢と16週齢のttwマウスで、同齢のコントロールマウスに比べてプロトロンビン時間が有意に短かった。プロトロンビン時間の短縮は血栓症のリスク因子であるという過去の報告があり、血栓発生に関与している可能性が示された。 大動脈から単離培養した血管内皮細胞を培養し、管腔形成能を評価したところ、血管内皮細胞増殖因子の添加の有無にかかわらず、ttwマウスではコントロールマウスに比べて、形成した管腔数、分岐点の数、総距離とも有意に高かった。このことから、ttwマウスの血管内皮細胞は管腔形成能が高く、血管新生が盛んなことが示唆された。新生血管は血管壁が薄く、脆弱であることが知られており、また血管が損傷すると止血のために凝固能が亢進することが知られている。脆弱な新生血管は凝固能亢進につながり、血栓形成に寄与する可能性が考えられる。 血管形態の評価はマウスの下腿筋組織を用いて行った。ttwマウスでは8、16、24週齢の全てにおいてコントロールマウスよりも血管壁が薄く、径が小さい血管が多かった。 また、過去に後縦靭帯骨化症患者では、脊柱靭帯組織の血管周囲に間葉系幹細胞(MSC)が多く存在しており、そのMSCは骨分化能が高いことと、ttwマウスの靭帯組織では骨化に先立って新生血管が侵入することが報告されている。これらのことから、ttwマウスの血管周囲にMSCが存在するかを組織学的に評価したところ、骨化が増大する時期である8週齢のttwマウスで、コントロールマウスに比べて血管周囲にMSCが有意に多く存在していた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各実験はそれぞれ一巡して終了し、手技は確立した。 現在は症例数の蓄積、さらなる裏付けの研究を行っている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は血液凝固能の評価における症例数の蓄積、間葉系幹細胞の存在を確認するための免疫染色についてさらなる検討を重ね、計画している。 結果が出たら、各実験のデータをまとめ、考察を重ねる。
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Causes of Carryover |
当研究室に既存の実験薬の使用、学会の中止による旅費の未使用で次年度使用額が生じた。 今後の追加実験で必要な物品の購入に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)