2019 Fiscal Year Research-status Report
新規スクリーニング法を用いた骨細胞特異的なメカニカルストレス受容体の同定
Project/Area Number |
19K18452
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
佐々木 文之 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, プロジェクト研究員 (10706469)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | メカノバイオロジー / 骨細胞 / スクレロスチン / イオンチャネル |
Outline of Annual Research Achievements |
骨が運動などのメカニカルストレスの負荷により堅牢さを保っていることを、我々は経験的に理解しているが、その分子機序については不明な点が多い.本計画では、独自に構築した骨細胞特異的なメカニカルストレス応答遺伝子、スクレロスチン(遺伝子名: Sost)を指標とした高感度スクリーニング法を用いて、骨細胞特異的に発現している新規メカニカルストレス受容体の同定を試みることを目的としている.ゲノム編集法である、CRISPR/Cas9法を用いて、骨細胞株IDG-SW3のSostの翻訳領域に、発光酵素ルシフェラーゼの一種であるNanoLucの部分的な遺伝子配列(タンパク質名: HiBiT)を挿入した、レポーター骨細胞株を樹立することに着手し、成功に至った.また本研究の実施過程において、骨細胞に発現しているメカニカルストレス感受性イオンチャンネルPiezo1が、Sostの発現抑制に寄与していることも明らかにした(Sasaki et al., BBRC, 2019)。現在、Pool型shRNAライブラリーを用いたスクリーニングに使用できる新たな系を立ち上げるために、Sostの転写開始点直下にDsRedを挿入した、レポーター骨細胞株を作製しているところである。また、2つのレポーター骨細胞株を用いて、ゲノムワイドなスクリーニングを行うことも今後予定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CRISPR/Cas9法を用いたノックイン細胞を作製するにあたり、まず始めにスクレロスチン遺伝子座に対するgRNAを10種類程設計し調べたところ、数種類効率のよいgRNAを得ることができた。そのうち、Sostの5’UTR付近のgRNAを用いて、両端に相同配列を含むHiBiTの塩基配列を有する外来遺伝子をCRISPR/Cas9法で処理した。その後、1000クローン以上のPCRスクリー二ングより、HiBiTの塩基配列を有するクローンを得ることに成功した。本クローンは分化誘導にともない、スクレロスチン-HiBiTの産生量が亢進することを確認している。 一方で、骨細胞に発現している既知のイオンチャンネルを対象とした、イオンチャンネルの発現プロファイルやアゴニストの刺激実験により、骨細胞に発現しているPiezo1がSostの発現抑制の一端を担っていることを発見した(Sasaki et al., BBRC, 2019)。Piezo1アゴニストであるYoda1で骨細胞を刺激するとSostの発現が抑制すること、またPiezo1の特異的な活性化により細胞内Ca2+が上昇すること、Piezo1の阻害剤であるGsMTx4を前処理しておくことで細胞内Ca2+上昇が消失することを確認した。一方で、CRISPR/Cas9法によりPiezo1を欠損したIDG-SW3細胞を樹立し、Sostの発現抑制がキャンセルされることも確認した。本細胞株を用いてメカニカルストレスによって活性化されたPiezo1は、下流のシグナル伝達経路としてAktのリン酸化を亢進すること、このAktシグナルを介してSostの発現抑制していることも証明した。
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Strategy for Future Research Activity |
作製に成功したSost-HiBiTノックインIDG-SW3細胞は、Pool型shRNAライブラリーのスクリーニングには適していないことから、これに対応した新たなスクリーニング系を立ち上げることを計画している。具体的には、CRISPR/Cas9法を用いてSostの転写開始点直下に蛍光タンパク質DsRedを挿入した、Sost-DsRedノックインIDG-SW3細胞を樹立する。これをPool型shRNAライブラリーで処理し、メカノストレスで刺激を行なった後、DsRedの蛍光強度をもとにセルソーターで細胞を分取する。これを1次スクリーニングとし、さらにSost-HiBiTノックインIDG-SW3細胞とArray型shRNAライブラリーを用いて2次スクリーニングを行う。その後、同定された候補遺伝子をもとに、遺伝子の欠損細胞や欠損マウスを作製しin vitroおよびin vivoの解析を行う予定である。
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