2019 Fiscal Year Research-status Report
Piezo1で解き明かす骨内血管新生と骨形成の機能的連関
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19K18468
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
西山 めぐみ 佐賀大学, 医学部, 助手 (00802844)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | メカノセンサー / イオンチャネル / 骨代謝 / type H血管 / 血管内皮細胞 / 骨芽細胞 / 破骨細胞 / 骨粗鬆症 |
Outline of Annual Research Achievements |
社会の超高齢化に伴い骨粗鬆症患者数は1000万人を超え、骨折によるQOL低下や医療経済上の損失が問題となっている。ゆえに、骨粗鬆症による骨減少を抑制する新たな治療の開発は現代社会の課題である。 大腿骨や上腕骨のような長管骨は軟骨の鋳型に血管内皮細胞が侵入し、骨芽細胞が誘導され骨基質形成がなされていく軟骨内骨化の様式で形成される。2014年、Kusumbeらにより軟骨内骨化の最前線である骨軟骨境界部には血管新生能と骨形成誘導能を持つ組織特異的な血管が存在することが報告された。このCD31とEndomucinを高発現するtype H血管は、加齢や血流低下に伴い減少することも報告されたことから、このType H血管は骨代謝上の重要な構造としてだけでなく、骨形成を促進する治療上の標的としても注目を集めている。また、ヒト血管内皮細胞には力学刺激の強さに依存して直接活性化されるメカノセンサーイオンチャネルPiezo1が発現しており、その活性は流体刺激により影響を受けることが知られている。 よって、本研究ではtype H血管内皮の血管新生能、骨形成誘導機能にPiezo1をはじめとしたメカノセンサーが責任分子として機能しているとの仮説を立て、免疫組織化学染色法を用いマウス骨組織の観察を行った。その結果、軟骨内骨化期の成体マウス大腿骨骨幹端において、Endomucin陽性、CD31陽性の血管内皮細胞が、成長板軟骨側に向かい肥大帯軟骨細胞の軟骨小腔内に突起を伸ばしていること、その血管内皮細胞にはメカノセンサーイオンチャネルが発現していることを見出した。また、Endomucin陽性、CD31陽性の血管内皮細胞に隣接して、多くの骨芽細胞、破骨細胞が存在し、これらもメカノセンサーイオンチャネルが陽性でありそれぞれに特徴的な局在を示すことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は当初の計画の通り、軟骨内骨化時期のtype H 血管内皮細胞におけるPiezo1発現について調べた。免疫組織化学染色法による観察を行い、メカノセンサーイオンチャネルが骨軟骨境界部の血管内皮細胞に発現していることが明らかとなり仮説に沿う結果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
マウス骨組織におけるメカノセンサーイオンチャネルとその他関連分子について形態学的評価を行い骨血管と骨形成の関係を調べる。また、骨減少病態でのtype H血管におけるPiezo1活性の評価のために、尾部懸垂飼育モデルマウスを用いた実験系を確立する。尾部懸垂飼育モデルは寝たきりや運動量の低下を模したものである。骨量が低下しtype H血管およびメカノセンサーイオンチャネルの経時的な変化を観察できる条件検討を行い、血管内皮細胞および骨系細胞の形態や分子発現に生じる影響を調べる。
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Causes of Carryover |
2019年度は観察対象とする分子が想定より増えたことにより染色実験および観察に実験時間を割いた。そのことにより、購入予定としていた骨減少病態モデルの作製に使用する精密実験機器や手術器具、また生体への低分子化合物投与に用いる精密機器を使用した実験系の準備を次年度に先送りとしたため次年度使用額が生じている。
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