2019 Fiscal Year Research-status Report
筋骨格系脆弱化におけるHMGB2に基づく間葉系細胞の分化制御機構
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19K18470
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
李 徳哲 宮崎大学, 医学部, 助教 (60768175)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | HMGB2 / サルコペニア / 異所性脂肪 / 間葉系幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではHMGB2機能に基づく間葉系幹細胞の分化制御機構を明らかにし、加齢や外傷後の筋骨格系脆弱化に対する革新的な治療法の確立を目指した技術基盤の創出を目的とした。 間葉系幹細胞(MSC)の脂肪分化、骨分化が、HMGB2 KO, Knockdownによってそれぞれ抑制、活性化されることをすでに報告している。Wntシグナルが進みβ-cateninが核内でLEF1と結合する際の調節因子としてHMGB2は報告されているが、免疫染色、ウェスタンブロットにてHMGB2 KOマウス骨髄由来MSCでは、未分化な状態ですでにWTよりも細胞膜・細胞質においてβ-catninの発現が増加していた。さらに、HMGB2 KO>HMGB2 siRNA>WT>HMGB2 over expressionの順でβ-cateninの発現が増加しており、MSCの分化方向決定の際に、Wnt/β-cateninシグナルをHMGB2が抑制していると考えられた。 マウス骨折モデルにおける、骨強度テスト, 定量的PCR, μCT解析を行った。KOマウスでは骨折髄内釘治療後の骨癒合, リモデリングがWTよりも早期に起こり、骨折治癒後の骨強度もWTの骨折側、さらにはKO 健側(コントロール側)よりも上昇していた。Runx2をはじめ骨分化誘導マーカーのPCRでの上昇を認めた。 マウスアキレス腱・腓腹神経断裂モデルを筋内異所性脂肪モデル(サルコペニアの一病態)として作製した。断裂後の腓腹筋重量/体重, その健側比はいずれもWTよりもKOマウスで高かった。PCRではこれまでのVitroの報告同様KOマウスでPpargやCebpaなどの脂肪分化誘導因子発現が著明に低下していた。組織学的にも断裂後2か月後の筋内脂肪は KOでWTよりも少なかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
HMGB2がβ-catenin発現を抑制してMSCの骨/脂肪分化を調節しているという予想が妥当そうであることをin-vivo, vitroにおいて示せた。 モデルマウス解析においても、まずWTにおいて期待通りの骨折治癒、筋内異所性脂肪浸潤を誘導できていることを確認し、モデル作製が奏功していると考えられる。さらに、in-vitroの結果に再現性をもってモデル実験においけるKOマウスの反応性、表現型を確認できた。 一方、我々のこれまでの実験で、HMGB2 KOによりMSCにおけるPDGFRAが抑制されると報告したが、腱・神経断裂後の筋肉ではKOマウスにおいてもPDGFRAの発現が増加しており乖離を認めた。PDGFRAは筋内異所性脂肪の誘導因子だけでなく、骨折治癒においても重要な役割をもっており、骨折モデルにおいても免疫染色などで発現を評価したい。しかし、マウス大腿骨をオートクレーブやマイクロフェーブで抗原賦活した際に、骨が崩れてしまい免疫染色評価が困難である。 WT, KOマウスの加齢による筋骨格系表現型の差異を評価予定であり、半年、1年をtime pointに予定している。2020年度にそのサンプリングおよび評価ができる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
フローサイトメトリーによるWT, HMGB2 KO MSCのソーティングを行い、PDGFRA+/-とHMGB2 +/-細胞を抽出し、骨分化, 脂肪分化誘導後、これまで同様に組織的評価、mRNAやタンパク半定量評価を行う予定である。HMGB2とPDGFRAのMSC分化における必要優位性の解析を行っていく。 すでにサンプリングがほぼ終了した骨折, 腱・神経断裂モデルマウスの組織学的評価を進める。また、MSC分化誘導サンプルと合わせ、HMGB2がMSCの分化に影響を及ぼすより詳細なメカニズムを解析する。現在注目しているのは、DNAアイクロアレイ解析で予想されている、HMGB2 KOによる抗酸化ストレス作用を解析することである。 骨の組織学的評価においては、凍結切片の粘着フィルムを用いた染色(免疫染色含む)を行う方針である。 また、加齢マウスのサンプリングを随時行って、これまでにモデルマウスやMSCの実験で確率した方法を用いてHMGB2 KOの表現型を解析する。
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Research Products
(2 results)