2020 Fiscal Year Research-status Report
びまん性特発性骨増殖症の予後及びその危険因子の解明:住民コホートの追跡
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19K18475
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
籠谷 良平 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (00597081)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | びまん性特発性骨増殖症 |
Outline of Annual Research Achievements |
DISHは、椎体前面にある前縦靱帯(Ossification of anterior longitudinal ligament: OALL)の骨化が連続して起こることにより脊椎の可動性が低下する病態である。体幹の柔軟性が失われるのみならず、OALLの連続性が途絶えている部位に体動時の応力が集中するため軽微な外傷で脊椎椎体骨折(vertebral fracture: VF)が生じる。脊椎椎体骨折は通常の脊椎骨折と違い四肢の長管骨の様な横断した骨折が生じ脊椎が椎体から後方成分まで連続した骨折(図1)を引き起こすため脊髄損傷を引き起こしやすく重篤な脊髄麻痺が生じる(Westerveld et al.Eur Spine J, 2009)。また、初診時脊椎骨折があるが重篤な神経症状を生じなかった症例においても骨折部の不安定性が強い事に加え骨折部にストレスが集中する事による骨癒合不全を引き起こし、遅発性の脊髄麻痺が続発することが問題となる。高齢者の増加に伴い近年臨床における報告が増加の一途をたどるが、未だに一般整形外科医の中でも認識が薄くVFと診断されるも漫然と保存加療を受け骨折部の不安定性による遅発性麻痺を引き起こし、初めて高次医療機関に紹介受診される症例も少なくない。DISHの病態を把握するためには疫学調査が必要となるが、DISHの疫学調査はほとんどされてこなかった。申請者は平成17-18年にベースライン調査にて撮影した和歌山県の山村・漁村住民1690人の全脊柱X線写真の読影を行い、Resnickの診断基準を用いて(Resnick D,et al.Radiology, 1975)DISHの有病率が10.3%(男性21.35%、女性4.55%)であり決して稀な疾患で無い事を明らかにした。2020年はその13年目の追跡調査を行った。今後解析をすすめDISHの疫学実態を明らかにする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度はその13年目の追跡調査を滞りなく終了している。現在順次解析をすすめておりDISHの今後疫学実態を順次明らかにしていく。その事によりDISHの有病率や疫学的実態のみならず、DISHの予後(VFやOPの発生との関連、運動機能、ADL、QOL、要介護移行の有無、生命予後)、DISHによる骨折者の予後(骨折の治癒、ADL、QOL、要介護移行の有無、生命予後)が明らかになる。本研究結果は、整形外科領域におけるDISHの病的意義を明らかにし、高齢者のQOL維持増進に寄与する。
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Strategy for Future Research Activity |
追跡調査のデータの解析を進めDISH有病者における新たなVF発生の有無を同定する。さらにDISH有病者における新たなOP発生の有無を同定する。ベースライン調査時の運動機能調査結果とのデータリンケージにより、DISH有病者の運動機能の低下の有無を解析するDISH有病者、DISHとVF,OP合併者それぞれの予後を明らかにする。ベースライン調査時の生活習慣、身体・運動機能、ADL、QOL、神経学的診察項目結果のデータリンケージを行い、DISHとDISHによる骨折やOPの予後影響因子を明らかにする。これにより、以下の項目の研究目的を達成する。A)追跡調査によるDISH有病者のVF発生、OP発生及びDISH新規発生及び増悪の危険因子の解明B)追跡調査によるDISH有病者、DISHとVF,OP合併者それぞれの予後の解明C) 新規発生DISHの発生率と危険因子の解明
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスにより国内及び国外の学会発表がなく、また順調に研究が遂行されたため学会参加費や旅費の必要性や維持費が少なくてすんだ。
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