2021 Fiscal Year Research-status Report
悪性骨軟部腫瘍に対する分子標的治療の個別化とバイオマーカーの探索
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19K18481
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
伊村 慶紀 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (40772687)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 骨肉腫 / 淡明細胞肉腫 / CIC-DUX4肉腫 / 類上皮肉腫 / 悪性骨軟部腫瘍 / 分子標的治療 / バイオマーカー / 細胞株 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒト淡明細胞肉腫細胞株であるHewga-CCS, MP-CCS-SY, KAS, SU-CCS1の計4株ではMETが発現しており、そのうちHewga-CCS, MP-CCS-SYにおいてはMETのリガンドであるHGFの発現およびMETの活性化が認められた。他の2株ではHGFは検出されず、METの活性化は微弱であった。HGFを発現している2株においてMET阻害剤投与により細胞増殖抑制効果およびG0/G1期での細胞周期停止が観察された。In vivoにおいてもin vitroの結果と同様にHGFを発現しているHewga-CCSではMET阻害剤投与による腫瘤増大抑制効果を認めたが、HGFを発現していないKASでは明らかな抑制効果を認めなかった。淡明細胞肉腫においてHGFのautocrine的な作用がMETシグナルの活性化に寄与している可能性があり、HGFの発現がMET阻害剤の感受性に相関しているものと考えられた。 また、ハイスループットスクリーニングを行い淡明細胞肉腫の新規治療候補薬としてHDAC阻害薬を同定した。In vitro、in vivoともにHDAC阻害剤投与によりヒト淡明細胞肉腫細胞株の増殖抑制効果を認め、フローサイトメトリーにてG0/G1期での細胞周期停止とアポトーシスの誘導を確認した。HDAC阻害剤投与により淡明細胞肉腫の疾患特異的融合遺伝子EWS-ATF1の発現低下を認めた。 さらに、SMARCB1/INI1遺伝子の欠失が特徴的とされる類上皮肉腫において、ヒト類上皮肉腫細胞株VAESBJにSMARCB1/INI1遺伝子を強制発現させ、安定発現細胞株を作製し、類上皮肉腫に対する有効な分子標的治療薬の探索を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
骨軟部肉腫には疾患特異的な染色体転座とそれに伴う融合遺伝子が存在するものが多く、融合遺伝子は腫瘍の発生や生存や増殖に関わっているとされているが、淡明細胞肉腫や滑膜肉腫においてそれらの融合遺伝子の発現をsiRNAで抑制できることを確認した。また、SMARCB1/INI1安定発現類上皮肉腫細胞株を作製した。 我々はこれまでに滑膜肉腫細胞株ではMETやPDGFRα、類上皮肉腫細胞株ではMET、CIC-DUX4肉腫細胞株ではIGF-1Rが活性化し、それらに対する阻害剤が奏功することを報告しているが、各々の肉腫における受容体活性化のメカニズムや疾患特異的な遺伝子異常との関連性や分子標的治療の効果を予知するバイオマーカーの解析はまだ不十分である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も淡明細胞肉腫や類上皮肉腫などのヒト肉腫細胞株において疾患特異的な遺伝子異常と受容体、そのリガンド、リン酸化受容体の発現との関連性を検討していく。その他の様々な組織型の骨軟部肉腫においても細胞株における活性化受容体やその下流シグナルを同定し、in vitro, in vivoにおいてその受容体を標的とした分子標的治療による抗腫瘍効果を評価していく予定である。そして、ウエスタンブロット法や免疫組織化学染色法による各々の受容体、そのリガンド、リン酸化受容体のタンパク発現解析、ELISA法による血中リガンド量測定が分子標的治療の効果を予知するバイオマーカーとなり得るかを検討する。さらに、我々が実際に手術等で採取した骨軟部肉腫症例の腫瘍組織においても細胞株と同様の受容体、リガンド、リン酸化受容体が発現しているかを検討し、予後との相関などを調査していく予定である。 また、滑膜肉腫、淡明細胞肉腫、類上皮肉腫に対するBET阻害薬の抗腫瘍効果をin vitro, in vivoで検討し、その作用機序をフローサイトメトリーやウエスタンブロット法で解明する。そして、その感受性と疾患特異的な遺伝子異常との関連性をRNA-Seq等で評価する予定である。
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Causes of Carryover |
骨軟部肉腫に対する分子標的治療の作用機序の詳細な解明が不十分で次年度使用額が生じた。使用計画としては、in vitroの実験はフローサイトメトリー、ウエスタンブロット法、免疫組織化学染色法、RNA-Seqなどを行っていく予定である。In vivoの実験はxenograft modelを用いて行う予定である。
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Research Products
(18 results)