2021 Fiscal Year Annual Research Report

腫瘍外環境の物理特性から見た骨肉腫転移メカニズムの解明と新規転移抑制療法の開発

Research Project

Project/Area Number	19K18482
Research Institution	医療法人徳洲会野崎徳洲会病院(附属研究所)
Principal Investigator	熊井準医療法人徳洲会野崎徳洲会病院(附属研究所), 研究所, 研究員 (20826549)
Project Period (FY)	2019-04-01 – 2022-03-31
Keywords	がん転移 / 細胞外マトリックス / ECMの硬さ / 細胞外環境への適応性
Outline of Annual Research Achievements	がんの細胞外環境は、サイトカインや成長因子などの液性因子やコラーゲン線維などの細胞外基質、がん関連線維芽細胞や免疫細胞などの細胞応答等、複雑な要素で構成されている。がん研究に工学的手法が導入され、インテグリンなど接着斑を構成する因子が細胞外環境の硬さや空間構造を感知し(メカノセンシング)、細胞内へ情報伝達し遺伝子発現などの細胞動態をコントロールする機構(メカノトランスダクション)が、遺伝子変異など細胞内要因と同様に重要であることが明らかになった。がん転移抑制は、がん患者の予後を改善する重要なポイントである。しかし、多くのがん種で根治が難しい状態が続いている。がん転移は、原発巣から転移巣への複数のステップを経て成立するが、その過程でがん細胞は様々な細胞外環境に適応する必要がある。しかしながら、軟らかい環境でのがん細胞のメカノセンシング機構や、その硬さに適応するメカノトランスダクション機構は不明な点が多い。そこで、軟らかい環境でのがん細胞動態を研究するために、従来より簡便に作製でき、細胞への硬度伝達の再現性の高いポリアクリルアミドゲル(PA)ゲル培養系を開発し報告した。さらに、この培養基材を用いて、硬度に対する細胞応答の変化や軟らかい環境下でのコラーゲン線維に対する依存性を骨肉腫で調べたところ細胞外硬度やコラーゲン線維に依存して増殖や細胞伸展が促進されることが示された。そして、骨肉腫の肺転移に対して線維化抑制薬を用いた治療が優位に転移を抑制できることを報告した論文へ参画した。現在、乳がん細胞と骨肉腫で軟らかい環境への適応性に焦点をあて研究を行っている。乳がんでは転移能の高い細胞ほど軟らかい環境に適応し細胞の表現系に変化を生じるが、骨肉腫では適応せず常に同様な細胞表現系を示すことを明らかにしている。