2020 Fiscal Year Research-status Report
「関節包」から考える股関節鏡治療革新に向けた解剖学的基盤研究
Project/Area Number |
19K18488
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
堤 真大 東京医科歯科大学, 医学部, 技術職員 (10821853)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 関節包 / 腸骨大腿靭帯 / 小殿筋 / 腸腰筋 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、関節包実質部の厚み分布を解析し、Journal of anatomyに受理された。一般的に、腸骨大腿靭帯は関節包の前上方領域を占める関節包靭帯であり、静的に関節の安定化に寄与するとされている。一方、関節包の前上方領域のすぐ浅層を走行する小殿筋や腸腰筋は、その腱・腱膜構造の一部が関節包に結合するとされるが、腸骨大腿靭帯と小殿筋や腸腰筋の腱・腱膜構造との関係は明らかでなかった。そこで、腸骨大腿靭帯、関節包、小殿筋や腸腰筋の腱・腱膜構造の関係を明らかにすることを解析の目的とした。東京医科歯科大学に供された解剖学実習体を使用し、肉眼解剖学的解析・マイクロCTを用いた画像解析・組織学的解析を組み合わせ、多角的に解析を行った。肉眼解剖学的解析により、小殿筋の腱構造が関節包に結合し、結合部の外側端が大腿骨転子間線の上外側端に近接していることがわかった。また、腸腰筋の深層腱膜が関節包に結合し、結合部の前内側端が大腿骨転子間線の前内側端に一致していた。マイクロCTを用いた画像解析により、小殿筋腱・腸腰筋深層腱膜との結合部が関節包前上方領域の厚みを形成していることがわかった。組織学的解析により、同結合部は密性結合組織より構成されていることがわかった。腸骨大腿靭帯は横部・下行部より構成され、それぞれの遠位部が大腿骨転子間線の上外側端と前内側端に付着するとされる。結合部と大腿骨の位置関係、関節包の厚み分布、結合部の組織学的性状に基づき、小殿筋腱・腸腰筋深層腱膜との結合により厚みを成した関節包そのものが、腸骨大腿靭帯の横部・下行部であると考えられた。すなわち、腸骨大腿靭帯が筋張力の影響を受け、関節の動きに合わせながら、動的な関節の安定化に寄与する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度に予定していた、股関節包実質部の厚み分布における解析に関し、肉眼解剖学的解析・マイクロCTを用いた画像解析・組織学的解析という多角的手法により成果を上げ、論文受理がされた(Journal of anatomy)。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度の解析結果により、股関節包が周囲筋の腱や腱膜と結合すること動的な安定化機構になりうることが示唆された。従って、股関節包が股関節の肢位の変化によってどのように変化するか、をあらたな検討項目として追加し、従来と同様に肉眼解剖学的・組織学的・マイクロCTを用いた画像解析によって多角的に検証する。
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Causes of Carryover |
概ね研究計画通りの助成金使用となったが、Covid-19の影響を受け、国際学会の中止や論文査読プロセスの遅延に伴い、残余(701,419円)が発生した。次年度のオンライン国際学会参加費用や今年度滞っていた分の論文投稿費用(Open access費や英文校正費)などに充てる予定をしている。
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Research Products
(3 results)