2020 Fiscal Year Research-status Report
間葉系幹細胞の経静脈投与によるステロイド誘発大腿骨壊死の予防で働く分子機構の解明
Project/Area Number |
19K18510
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
島崎 都 金沢医科大学, 医学部, 講師 (00440511)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ステロイド / 間葉系幹細胞 / 大腿骨頭壊死 |
Outline of Annual Research Achievements |
ステロイドパルス療法の重篤な副作用である大腿骨壊死に対する骨髄由来間葉系組織幹細胞BM-MSCの経静脈投与による骨壊死阻止過程で働く、BM-MSCの傷害部へのホーミングと傷害阻止に関わる分子機構を明らかにするために、ステロイドと低酸素による細胞傷害性ストレスを受けた骨細胞とMSCsの反応をミトコンドリアの機能、酸化ストレス、アポトーシス抑制能についてin vitroで解析した。陰性対照群とステロイド添加、低酸素下、ステロイド添加+低酸素下で培養した4グループを作成した。ミトコンドリア膜電位差、エネルギー産生ATP合成酵素(ATP5A)と酸化ストレスマーカー(8-OHDG)の発現ならびにアポトーシス阻害因子に関し、マウスの骨細胞(MLO-Y4)と間葉系幹細胞の比較解析を行った。骨細胞では、陰性対照群と比較すると全ての細胞群でミトコンドリア膜電位低下、ATP5A発現低下、8OHDG発現亢進とアポトーシス誘導を認めた。一方MSCでは全ての細胞群で陰性対照群と同様にミトコンドリア膜電位、ATP5A発現がみられたが、8OHDG発現やアポトーシス阻害因子発現はみられなかった。MSCは、骨細胞と比較し、ステロイド負荷や細胞傷害性ストレスに強い細胞である。この結果は、ステロイド誘発性大腿骨頭壊死をMSCがin vivoにおいて予防効果を持つ我々の先行研究データを、in vitroおいて検証するデータの1つとなった。この研究は論文投稿中。加えて、質コルチコイド関連の大腿骨頭壊死の主な原因は、酸化ストレスは根本的な要因として、虚血性低酸素イベントであると広く認められている。このことからミトコンドリア転写因子であるTFAMに着目し、ミトコンドリアの機能解析を研究をin vitroで行い、論文を作製した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ステロイド誘発性大腿骨頭壊死の発症機序に関してこれまで多くの研究が行われてきた。酸化ストレスによる骨細胞のアポトーシスや血管内皮細胞の機能障害が注目されているが、その分子機構の詳細は未だ明らかではない。臨床応用に向け、BM-MSCの大腿骨傷害部へのホーミングと傷害阻止に関わる分子機構の解明が緊急の研究課題となった。本研究では、BM-MSCの傷害部へのホーミングと傷害阻止に関わる遺伝子群を、遺伝子プロファイリングにより選別し、in vivoにおける遺伝子・蛋白発現解析とin vitroにおける遺伝子発現修飾実験により検証することが目的である。 これまでに、ステロイドと低酸素による細胞傷害性ストレスを受けた骨細胞とMSCsの反応をミトコンドリアの機能、酸化ストレス、アポトーシス抑制能についてin vitroで解析した。この結果は、ステロイド誘発性大腿骨頭壊死をMSCがin vivoにおいて予防効果を持つ我々の先行研究データを、in vitroおいて検証するデータの1つとなった。この研究は論文投稿中。更に、糖質コルチコイド関連の大腿骨頭壊死の主な原因は、酸化ストレスは根本的な要因として、虚血性低酸素イベントであると広く認められている。ミトコンドリアDNAは核よりも酸化的損傷を受けやすく、その機能、保存、調節に役割を果たすミトコンドリア転写因子A(TFAM)がますます研究されている。低酸素環境への糖質コルチコイドの添加によって誘発される酸化的損傷と骨細胞壊死との関係に対するTFAMの影響に焦点を当てた研究も論文となった。結果を2つ論文にすることができたため、順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、更なるMSCのホーミング機能解析をタンパク・遺伝子レベルで行い、MSCの分化能へ着目していくつもりである。骨芽細胞への分化能を有する間葉系幹細胞(MSC)を用いた再生医療は有力な治療法とされている。骨芽細胞の増殖、分化および機能のメカニズムの解明は重要である。骨髄由来ラット間葉系幹細胞の骨芽細胞分化能に対するデキサメタゾンまたは低酸素症の影響を、骨芽細胞分化マーカーと骨形成に関与する転写因子を用いて、in vitroにおいて検証する。さらに、先行研究のMSCの経静脈注入による大腿骨頭壊死の予防において、MSCsがin vivo で骨壊死予防に対して働くメカニズムの解明につなげることが目的である。この研究もほぼ結果がまとまり、近日論文投稿する予定である。今後は、MSCの分化能に加え、遺伝子解析に着目して進展させてていくつもりである。
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