2021 Fiscal Year Research-status Report
間葉系幹細胞の経静脈投与によるステロイド誘発大腿骨壊死の予防で働く分子機構の解明
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19K18510
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Research Institution | Kanazawa Medical University |
Principal Investigator |
島崎 都 金沢医科大学, 医学部, 講師 (00440511)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 骨髄由来間葉系幹細胞 / デキサメタゾン / 低酸素 / 分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
間葉系幹細胞(MSC)を用いた再生医療は有力な治療法とされている。骨芽細胞の増殖、分化および機能のメカニズムの解明は重要である。骨髄由来ラット間葉系幹細胞の骨芽細胞分化能に対するデキサメタゾンまたは低酸素症の影響を、骨芽細胞分化マーカーと骨形成に関与する転写因子を用いてin vitroにおいて検証する。先行研究のMSCの経静脈注入による大腿骨頭壊死の予防において、MSCsがin vivo で骨壊死予防に対して働くメカニズムの解明につなげるために実験を行った。MSCを、デキサメタゾン、低酸素状態、またはその両方に24時間、あるいは48時間曝露させた。その後、骨芽細胞分化培地で21日間分化させた。分化させて21日目において、アルカリホスファターゼによる骨芽細胞分化能の評価を行った。コラーゲン1とオステオポンチンと、骨形成に関与する転写因子のタンパク発現を評価した。デキサメタゾンまたは低酸素で24時間曝露したMSCは、コントロールと比較してALP発現は亢進していたが、有意差は無かった。72時間曝露したMSCは、コントロールと比較して有意にALP発現が亢進していた。デキサメタゾン、低酸素による曝露は、骨芽細胞に分化したMSCの増殖能に影響は与えなかった。骨芽細胞分化マーカーであるコラーゲン1、オステオポンチンに関しても、コントロールと比較して、72時間曝露したMSCでは高度な発現が示された。同様に、骨形成に関与する転写因子であるRunx2,Osterix,ATF4に関しても、コントロールと比較して、曝露したMSCでは発現が増強していた。21日間低酸素暴露させた骨芽細胞は、HIF1と血管新生因子が発現した。デキサメタゾンと低酸素症による細胞傷害は、曝露した時間に依存してMSCの骨芽細胞への分化能を亢進させた。骨形成に関与する転写因子の発現を増強させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在、論文投稿し、マイナーリビジョンで返答あり、reviewerとのやり取りを行っている。 追加実験として、骨髄由来間葉系幹細胞をデキサメタゾン、低酸素暴露後骨芽細胞に分化する評価に、石灰化染色アッセイを加え、行っている。さらに、間葉系幹細胞のhomingについて検証するために、GFPを遺伝子導入した幹細胞をウサギに投与し、筋損傷部位へ集まった軟部組織について、GFPの蛍光観察により確認し、筋組織の組織傷害のMSCによる抑制効果を検証済みである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、間葉系幹細胞による軟骨損傷治療効果の検証へ焦点を移行していく。関節リウマチは女性に多い身近な難治性疾患であり、全身の関節に慢性的炎症が生じ、進行すると関節の変形をきたす。激しい痛みを伴うQOLの低下に加え、治療期間が長期に及ぶことから福祉、特に介護に関わる深刻な社会問題であり、治療法のさらなる増進が切望されている。関節リウマチの発症機序は、滑膜における自己免疫の異常から起こる炎症による軟骨、骨の破壊とされている。2020年の軟骨細胞が関節の炎症を誘導する報告から、申請者は以前から抱いていた、滑膜と骨の間にある軟骨が両者の組織破壊に働く更なる機序も存在する可能性を見出した。本研究は、骨芽細胞と滑膜細胞を対照として用い、in vitro/in vivoにおけるタンパク発現の解析により、関節リウマチ軟骨細胞から放出される組織破壊増悪因子を特定し、関節リウマチにおける関節破壊で働く新たな機序の解明を行うとともに、申請者が報告した骨髄由来間葉系幹細胞 (BM-MSC)を用いた大腿骨頭壊死の予防を応用し、関節炎疾患におけるMSCによる損傷軟骨治療法の確立を目的として、研究を計画している。
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Causes of Carryover |
昨年度、購入した消耗品の購入額が考えていた額より安価であったため、若干の残金が生じた。本年度、残金も含め、研究に使用する消耗品にあて、論文作成にむけて残りの実験を行う予定である。
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