2020 Fiscal Year Research-status Report
関節軟骨の階層構造の形成及び関節軟骨の維持におけるRho調節因子の機能の解析
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19K18540
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Research Institution | Kibi International University |
Principal Investigator |
森 芳史 吉備国際大学, 保健医療福祉学部, 教授 (60757954)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 関節軟骨 / Rho |
Outline of Annual Research Achievements |
関節軟骨は階層構造を持ち、各層が異なる基質組成を持つ事で、適切な生理的機能を持った関節軟骨が構成されるが、この階層構造の発生・維持のメカニズムは殆ど知られていない。研究代表者は、以前の研究でRhoタンパクの機能を修飾する3つの因子がそれぞれ関節軟骨で階層特異的に発現することを見出している。Rhoシグナルの関節軟骨での重要性を示す先行研究と併せて、これらの因子が関節軟骨で層特異的に発現し、各層に特異的な基質形成を誘導する事で、関節軟骨の階層構造が形成・維持されるのではないか?、との考えに至った。本研究ではその知見をさらに発展させることを目指す。以下、本年度の研究実績の概要を示す。 まず、3つのうち最も幅広く発現するサブタイプについて、Col2a1-Creマウスにより軟骨特異的にノックアウト(KO)したものについて、昨年度までに採取した12週齢でのサンプルを用いて組織学的解析を行った。まず、組織免疫染色により、このサブタイプを有意に発現抑制できたことを確認した。次いで、Hematoxylin-Eosin染色の後組織学的解析を行った。その結果、KOマウスでは、表層から深層へ向かう細胞の配列が乱れ、また、通常細胞体積の小さな表層部分での肥大化が顕著に生じていることを見出した。細胞数もKOマウスで有意に減少していた。以上の結果から、このサブタイプが関節軟骨の階層構造の形成・維持に主要な役割を担っていることが強く示唆された。 また、3つのうち最も表層に発現するサブタイプについては、同様に昨年度までに採取したサンプルを用いて組織学的解析を行った。現在の所、12週齢でtidemarkの位置が有意に変化していることを見出している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以前に行った未発表のものを含め、本年度までに行った研究により、対象としている3つのサブタイプすべてについて、KOマウスを用いた解析により、それぞれの発現する部位において関節軟骨の階層構造の形成に関与していることが強く示唆される結果が得られている。特に、最も幅広く発現するサブタイプについては、KOマウスで非常に強い表現型があり、階層構造の形成にとって主要な因子であると考えられる。以上のように、in vivoで本研究の仮説を支持する知見が順調に蓄積してきている。
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Strategy for Future Research Activity |
in vivo解析については、組織切片を用いた解析を更に進める。具体的には、免疫染色やEdU染色・TUNEL染色などを行い、分子メカニズムや細胞動態を明らかにしていくことを目指す。また、空間的な広がりを持つ関節軟骨の異常をより精確に捉えるため、関節軟骨の3次元的な撮像を行ったり、画像解析の手法の改善を行ったりしていく。さらに、in vivoでの知見を踏まえ、細胞培養や器官培養を用いたin vitro解析も行い、分子メカニズムの解明も進めていく。
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Causes of Carryover |
本年度4月に研究機関を移動した。移動後の研究環境のセットアップに時間を要し、研究を開始するのが遅くなったため、当初計画に比して使用額が少なくなった。次年度は整備の進んだ環境で、本年度よりも実験を進められる状況であるので、本年度の残額と次年度の当初予定の使用額とを併せた金額を用い、可能な限り研究を進めていく。
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