2019 Fiscal Year Research-status Report
AIと周波数分析によるセメントレス人工股関節挿入巧打音の特性解析
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19K18542
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
本間 康弘 順天堂大学, 医学部, 講師 (80732883)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 人工股関節 / 固有周波数 / AI / 機械学習 / FFT / 骨折 / 合併症 |
Outline of Annual Research Achievements |
1:in vitro; 骨モデルを用いたインプラント挿入試験で発生する音と振動の分析 1-1: 手術用器具及びインプラントを用いた固有周波数の計測;方法:手術で用いる器具及びインプラントの固有周波数の解析を行った。結果:叩打音の周波数特性に寄与する特定の器具及びインプラントの固有周波数が明らかになった。一方で、異なる形状・材質のハンマーが複数存在し、それぞれ異なる固有周波数を持つこと、ハンマーの固有周波数が叩打音周波数特性に寄与することがわかり、ハンマー毎に解析方法を変える必要性、ハンマーによる影響を最小化する必要性が示唆された。 1-2: 模擬骨を用いた模擬手術による叩打音解析;方法:既存模擬骨を用いて模擬手術を行った。結果:既存模擬骨の骨強度と実際に手術を受ける患者の骨強度に大きく乖離があることが判明した。また、1-1の結果で示されたように、ハンマーの周波数が叩打音周波数特性に影響を与えるため、3Dプリンターを用いた模擬骨での実験に先立ち、叩打音に影響を与えないハンマーの開発の必要性が示唆された。 2: in vivo; 実際の手術で発生する巧打音の周波数特性と合併症の関係性 2-1: 人工関節手術、大腿骨用インプラント挿入時の叩打音変化の客観的特性解析;方法:手術時のステム叩打音を録音し、FFT解析を基本に解析を行った。結果:挿入が進むにしたがい、絶対音圧は減弱し、1.0-1.5KHzの周波数領域の補正音圧が強く、5.5-6.0kHz・8.5-9.0kHzの補正音圧が弱くなることが明らかになった。 2-2: 人工関節手術、大腿骨用ラスプ挿入時の叩打音変化のAIを用いた客観的特性解析;方法:手術時のラスプ叩打音を録音しAIを用いた機械学習による解析を行った。結果: ROC-AUC値0.90となる適切な最終ラスプサイズかどうかの判断が可能なアルゴリズムを作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、以下の3つをマイルストーンとして設定した。 ①3Dプリンター技術を用いて、骨形態・質が異なる骨モデルを作成、②骨モデルを用いたインプラント挿入試験で発生する音と振動を分析、③実際の手術で発生する巧打音の周波数特性と合併症の関係性を解明
③に関しては、すでに叩打音の一定の周波数特性を解析することができており、十分に進捗していると判断した。特に、ステム挿入時の叩打音の変化に関する特徴的な周波数の特定ができている。この点は、今まで感覚的に捉えられていた音を客観的に示したことに意義があると考える。また、分析手法が確立したことで、解析スピードが大幅に進み、今後のさらなる解析に期待が持てる。AI研究者・音響学研究者との連携も、定期的に会議を開催するなど順調である。そのような結果を踏まえ、現在、論文を2本作成中であり、2020年10月に開催される日本整形外科学会基礎学術集会においても2演題が採択された。 一方、①と②に関しては、3Dプリンター技術を用いた骨モデルを作成する前に、手術機器等の固有周波数解析を行った結果、叩打音周波数特性に影響を与えないハンマーの開発が優先される状況であることが判明した。よって、3Dプリンターによる骨モデル作成は2020年度後半から2021年度にかけて実施予定と変更とした。その代わり、それぞれの手術機器や模擬骨の固有周波数計測の計測を半無響音室で実施し、3Dプリンターで作成した骨モデルを用いた実験の準備実験を行なった。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、実際の手術での叩打音(in vivo)と模擬手術での叩打音(in vitro)を両軸にし、以下のごとく研究を進めていく。 1: 叩打音周波数に最小限の影響しか与えないハンマー(以下、特殊ハンマー)の開発;2019年度の研究結果で、通常ハンマーは叩打音周波数に大きな影響を与えることが判明した。よって、叩打音の周波数領域には存在しない固有周波数をもつ特殊なハンマーを作成する。 2: 特殊ハンマーを用いた模擬手術での叩打音解析;特殊ハンマーを用いて、模擬骨を用いた模擬手術を行い、インプラント種類、叩打方法(加速度)・挿入方法(適切挿入・不適切挿入・骨折発生)を設定し、解析を行う。同時に、3Dプリンター技術を用いた骨モデルの作成を行う。 3: 通常ハンマーを用いた実際の手術での叩打音解析;2019年度の内容を継続して、実際の手術の際の叩打音の録音・解析を行っていく。通常ハンマーによるバイアスはあるものの、解析は可能であり、次に示す違いを分析する。1)骨粗鬆症患者・変形性股関節症でのラスプ音・ステム叩打音の特徴の違い、2)ステム沈下と関連する最終ラスプ・ステムの叩打音の特徴の違い、3) 手術熟練者 vs ビギナーでの叩打音の違い、4)インプラント種類による叩打音の違い. また、術中骨折や異常角度でのインプラント設置等の合併症も一定程度発生することが予想され、録音を継続し、合併症発生時の音の分析を行い、そのような合併症に特徴的な叩打音の解析を行う。 4: 特殊ハンマーを用いた実際の手術での叩打音解析;特殊ハンマーの開発が行えた場合、適切な法令・ガイドラインを遵守した上で、この特殊ハンマーを用いた手術を行い、その際叩打音解析を予定する。通常ハンマーと比べて、解析精度の向上が期待される。
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Causes of Carryover |
消耗品や書籍の費用が該当年度に不要であったため。当該使用額に関しては、次年度に同じく消耗品や書籍等で使用する予定。
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