2019 Fiscal Year Research-status Report
全エクソーム解析によるヒト無精子症患者における新規遺伝子の同定
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19K18550
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
水無瀬 学 旭川医科大学, 大学病院, 助教 (90646069)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 無精子症 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ヒト無精子症の中でも、164名の日本人SCOS患者のDNAを用いて次世代シークエンスを行い、WES解析を行うことで、ヒト全遺伝子からSCOSの原因となる遺伝子の検索を行う。すでにリクルートされている精子低形成による無精子症患者と、減数分裂停止による無精子症患者にも、SCOS患者と同様の遺伝子変異を有するかどうかの比較検討を行う。これらの検索・検討を経て、SCOSの原因遺伝子群を同定することができれば、DNA採取のみでSCOSの診断を行うことが将来的に可能になる。また、閉塞性無精子症の類縁疾患との遺伝学的な類似点・相違点を明らかにすることで、精粗細胞から2回の減数分裂を経て精子細胞になり、更に成熟して精子が形成される、一連の精子形成過程のメカニズムを解明することにも寄与する。 本研究により、ヒトの全エクソームを網羅的に解明することが可能で有、他の類縁疾患との類似点や相違点を抽出し、精子形成過程のメカニズムを解明する一助になる。また、医療の現場で活用されつつある人工知能システムを駆使することで、Sertoli-Cell Only Syndrome (SCOS)の新規の原因遺伝子を同定し、この分野の研究の裾野を広げることができる。さらに、従来は精巣生検のみでしか診断できなかった本疾患を、DNAの採取という、より低侵襲の検査で原因を明らかにすることができ、男性不妊症患者の遺伝学的な診断の確立にも将来的に貢献できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
すでにすべての患者の次世代シークエンサーによるvariantsのcallをおこなった。この膨大なvariantsの中から、SCOS患者の原因として報告のある既知遺伝子の洗い出しを行い、本研究の患者にも同様の遺伝子変異が存在するのかを検索し、また、SCOSだけではなく、男性不妊症として報告のある既知遺伝子にも範囲を広げ、同様の遺伝子変異が存在するのか、存在する場合は、原疾患とどのような差異、類似点があるのかを詳細に検討を行った。 その中で、候補遺伝子の一つであったpoly(A) polymerase beta gene は日本人のSertoli cell only syndromeの患者において、関連性がないことをJ Obstet Gynaecol.に発表した。新規遺伝子同定から機能解析を行う過程での実験にやや遅れを生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
現段階では、新規遺伝子の候補として可能性のある遺伝子を2つ同定した。まだ詳細を述べることはできないが、今後ノックアウトマウスを作成し、変異のあるマウスが妊孕性を持つのか、繁殖を試みる予定である。また、妊孕能を認めない場合は、精巣生検を行うことにより、精巣内に精子が存在するのか、精巣の組織学的な検索を行うことにしている。 また、そのほかに、現在論文発表が可能と思われる2遺伝子を同定した。精子無力症として報告のある遺伝子であるGALNTL5に関しては、SCOS患者の4名に同定した。表現型は異なるものの、精子形成に関連する遺伝子変異として、今後論文発表を行う予定である。 さらに、Y染色体上に存在するDDX3Yに関しても、フレームシフト変異を同定した。この遺伝子は、微少欠失により、無精子症を引き起こすことが報告されているが、1塩基の変異により、フレームシフト変異を起こし、結果的に生成されるアミノ酸が短縮することが予想されている。詳細な機能解析は現在進行中であるが、何らかの機能解析を行うことができた場合には、論文発表を行いたいと考える。
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Research Products
(1 results)