2020 Fiscal Year Research-status Report
化学内分泌療法抵抗性前立腺癌における癌周囲微小環境によるHippo経路制御の役割
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19K18551
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
奈良 健平 秋田大学, 医学部附属病院, 助教 (00801888)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 前立腺癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
勢抵抗性前立腺癌に対し、近年、新規内分泌・化学療法が使用可能となったが、各治療には交叉耐性や副作用が存在し、依然難治症例が多く存在する。よって、前立腺癌において既存の化学内分泌両治療抵抗性機序解明は急務であり、新規治療標的同定の鍵を握る。我々はこれまでのpilot研究から前立腺癌化学内分泌療法耐性に癌微小環境変化とHippo経路活性が重要である可能性を見出している。さらに近年の報告から、細胞微小環境による細胞内Hippo経路制御が明かとなりつつある。上記より我々は前立腺癌化学内分泌療法抵抗性において癌微小環境が細胞内Hippo経路を制御し、癌増悪進展に関与すると仮説を立て研究を進めている。pilot研究で、細胞接触や機械刺激を感知し、癌増悪進展や癌幹細胞に関連するとされるHippo経路の代表的転写共役因子であるYAPの核内発現の重要性を見出している。本年度までの研究で前立腺全摘患者検体においてYAP1核内高発現が薬剤耐性および化学内分泌療法後前立腺全摘を施行した前立腺癌患者の予後因子になることを見出し、これを報告した。その後の細胞実験でYAP1以外のHippo経路関連遺伝子に発現変化を認めないことから、前立腺癌化学内分泌療法抵抗性とHippo経路を結びつける重要経路の同定に至っていない。また、これまでの検討におけるlimitationに対する対応を昨年は主に進めてきた。本年度以降、下記のように研究計画の一部変更も加え、更に検討を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前立腺全摘患者検体でYAP1核内高発現が薬剤耐性および化学内分泌療法後前立腺全摘を施行した前立腺癌患者の予後因子になることを、昨年、2名の病理医によるvalidationにより再確認し、結果を報告した(Matsuda Y, Narita S, Nara T, et al. Impact of nuclear YAP1 expression in residual cancer after neoadjuvant chemohormonal therapy with docetaxel for high-risk localized prostate cancer. BMC Cancer. 2020 Apr 15;20(1):302.) 。その後in vitroにおいて化学療法抵抗性とhippo経路の関連の軸となる他分子(TAZやVGL4等)を探索するためwestern blottingを行ったが、いずれも発現変化を認めなかった。また、これまでヒト前立腺全摘検体の解析は術前治療が行われた検体の組織を中心に検討していたため、無治療で前立腺全摘を施行した組織でのYAP1発現の検討が必要と考えた。その後当科において治療された症例数が増加したため、ハイリスク限局性前立腺癌80例、240コアの前立腺全摘標本のtissue microarray構築を進めており、症例とスポット組織の選定が終了した、あとは受託によりTMAの作成を依頼し、完成したらYAP1の発現を解析する予定である。更に最近YAP/TAZ経路が腫瘍免疫に重要な働きを与えていることが報告されたため(Pan, Mol Cancer Res, 2019)、前立腺癌発症マウスモデルで腫瘍周囲微小環境とくに免疫環境と癌増殖の関連を検討し、前立腺癌増悪モデルでは制御性T細胞が減少し、CD8陽性キラーT細胞が増加していることを見出した(Sato, Nara, The 115th Annual Meeting of the American Urological Association 2020。)。今後は同モデルを用いてRNA、蛋白レベルでHippo経路と腫瘍免疫環境の関連を検討したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
①無前治療前立腺全摘検体tissue microarrayを用いた臨床アウトカムとYAP1発現の解析 ②In vitroにおけるYAP1および関連分子の前立腺癌細胞株での機能的意義の解析 ③In vivoにおける腫瘍周囲免疫細胞浸潤と癌増悪におけるYAP1を中心としたHippo経路関連蛋白の関連検討
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Causes of Carryover |
実験の進行状況により初年度使用額に未使用分が生じたため、翌年分として請求した
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