2019 Fiscal Year Research-status Report
難治性尿路上皮癌に対するフェロトーシス誘導による新規治療戦略
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19K18599
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
長谷川 政徳 東海大学, 医学部, 講師 (50383823)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | フェロトーシス / 尿路上皮癌 / 抗癌剤耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでに、尿路上皮癌細胞株であるT24株およびUMUC3株を用いて、シスプラチンとゲムシタビン抗癌剤に対する抵抗株を作製した。これらの細胞株は、各抗癌剤に抵抗性をしめす一方、フェロトーシスから細胞を保護するグルタチオンペルオキシダーゼ4(GPX4)の阻害剤であるRSL3に感受性を示した。RSL3による細胞死はフェロトーシスを抑制するferrostatin-1により抑制され、アポトーシスを抑制するカスパーゼ阻害薬Z-VAD-FMKで抑制されなかったことから、生じた細胞死はフェロトーシスであることが明らかとなった。抵抗株においてフェロトーシス感受性が高いことを予測していたが、これらの抵抗株においては親株と感受性は変わらなかった。一方で、抗癌剤に耐性を有していても、フェロトーシス誘導により癌細胞増殖抑制が可能であることが明らかとなった。 さらに、RSL3によるフェロトーシス誘導による細胞死は、アラキドン酸等の多価不飽和脂肪酸の培養液への添加により著明に促進され、オレイン酸等の一価不飽和脂肪酸により抑制された。つまり、脂肪酸の添加により、生体膜のリン脂質の組成が変化し、フェロトーシス感受性が変化することが確認され、生体膜の脂質の組成を外的に変化させることで、フェロトーシスを効率的に誘導することが可能であることが示唆された。また、これらの知見は尿路上皮癌において報告はなく、抗癌剤抵抗性を含む難治性尿路上皮癌に対する新規治療法となりうる可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は大まかに順調に進行していると考える。研究課程において、脂肪酸の成分とフェロトーシス感受性の関連が明らかとなり、今後の重要な研究課題となりえると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
de novoの脂肪酸合成によりΔ9-脂肪酸デサチュラーゼ(SCD1)により一価の二重結合が導入されてオレイン酸が生成される。当初の予定に加えて、フェロトーシス抑制性であるオレイン酸を中心とした一価不飽和脂肪酸およびSCD1に着目した研究を検討している。 (1)癌細胞におけるSCD1によるフェロトーシス感受性への影響:一般に癌細胞はSCD1発現が上昇しており、オレイン酸合成が促進し、フェロトーシスから逃避していると考えられる。尿路上皮癌においてCAY10566によるSCD1の抑制はフェロトーシス感受性を上昇させるか検討する。 (2)脂肪酸の枯渇とフェロトーシス感受性:脂肪酸枯渇はde novoのオレイン酸合成を亢進させ、フェロトーシスからの逃避により癌細胞が生存していることが推測される。FBS濃度を低下させることで培養液中の脂肪酸濃度を低下させ、SCD1発現が上昇するか確認する。脂肪酸が低下した状態でのSCD1阻害は効率的にフェロトーシスが誘導可能か検討する。 (3)細胞密度との関連:低細胞密度と高細胞密度でのSCD1の発現を確認し、高密度においてSCD1が上昇しているか検証する。高密度ではフェロトーシス感受性が低下しているが、CAY10566によるSCD1阻害により感受性が回復するか検討する。 (4)リピドミクス解析:細胞密度が上昇するとSCD1の発現亢進により、実際の生体膜中のオレイン酸が上昇する、もしくは、SCD1の基質でステアリン酸との比率が上昇しているか(SCD1の機能が機能しているか)確認する。
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Causes of Carryover |
本研究の遂行にあたり、既存の器械および貯蓄の物品および試薬にて代用が可能であったため、残額が生じた。残額分は次年度にて物品費および機器購入費、その他(解析等)にて使用する予定である。
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