2020 Fiscal Year Annual Research Report
難治性尿路上皮癌に対するフェロトーシス誘導による新規治療戦略
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19K18599
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
長谷川 政徳 東海大学, 医学部, 講師 (50383823)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | フェロトーシス / 尿路上皮癌 / 脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞膜を構成するリン脂質は極性基に2つの脂肪酸が接続し疎水基をなし、疎水基には様々な脂肪酸が接続するが、4個の二重結合を有するアラキドン酸に代表されるような“多価不飽和脂肪酸(PUFA)”の二重結合が過酸化されることで、脂質の過酸化が起こりフェロトーシスを起こす。一方で、de novoの脂肪酸合成では、グルコースの代謝過程で供給されるアセチルCoAが原料となり、飽和脂肪酸からΔ9-脂肪酸デサチュラーゼ(SCD1)により“一価不飽和脂肪酸(MUFA)”であるオレイン酸、パルミトレイン酸が生成される。MUFAは、先述のリン脂質におけるPUFA占拠率を低下させることでフェロトーシスを抑制することが報告されている(Cell Chem Biol. 2019)。尿路上皮癌細胞株(T24およびUMUC3)に対して実際にMUFAであるオレイン酸200microMもしくはパルミトレイン酸200microMを24時間前投与することでフェロトーシス感受性は著明に低下した。逆に、アラキドン酸100microMを24時間前投与することでフェロトーシス感受性は著明に亢進した。リピドミクス解析により各脂肪酸を加えると、生体膜における比率が上昇することを確認した。以上より、フェロトーシス感受性に生体膜の脂質組成が大きく影響することが明らかとなった。一般に癌細胞はSCD1発現が上昇していることから、オレイン酸合成が促進することでフェロトーシスから逃避していると考えられ、CAY10566によるSCD1の抑制はフェロトーシス感受性を上昇させた。また、尿路上皮癌の治療にゲムシタビンが投与されるが、このゲムシタビンはSCD1を低下させたことから、生体膜のMUFA比率を低下させる可能性があり、これまでにゲムシタビンとフェロトーシス誘導薬との併用療法の可能性を見出しており、現在新規治療法の構築を目指している。
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