2019 Fiscal Year Research-status Report
子宮頸部上皮内病変の細胞極性蛋白発現異常症例に対するBCG療法の有用性検討
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19K18647
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
水島 大一 横浜市立大学, 医学部, 助教 (80835059)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 子宮頸部上皮内腫瘍 / 免疫療法 / 婦人科腫瘍 / BCG |
Outline of Annual Research Achievements |
子宮頸癌の前駆病変である子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)の標準療法は外科治療だが,自然治癒する場合もある.病変の転機や自然治癒を予測するバイオマーカーの開発および,病変の進行リスクが高い症例への薬物治療の開発が求められている.我々は細胞極性蛋白aPKCの発現異常がCIN病変の進行を予測するする可能を発見し,観察研究を開始した. 1)前向き観察研究: CIN1/2の予後予測マーカーとしてaPKC発現を評価する.初回診断されたCIN1/2を対象として,初回生体のHE染色/病理診,aPKC発現,HPVのタイピングで層別化し, 病変の進行/軽快率をカプランマイヤー法と多量解析で評価する予定で,現在登録症例が150症例となり一部の初期登録例は病変の転機(増悪/治癒)をむかえている。登録を継続するが、免疫染色を含む中間解析を開始している。
樹立した子宮頸部不死化ケラチノサイトでの実験は細胞の技術的な問題が障害となっている.そこで,臨床検体の免疫染色で浸潤癌においてもaPKCの異常発現症例は予後が不良であることから,aPKCによる浸潤能の機序解明を優先させる方針とした. 2) aPKCによる浸潤能の機序解明:宮頸がん細胞株のaPKCノックダウンや過剰発現で細胞増殖能力や浸潤能力に変化を認めなかった.しかし,核局在型変異体(子宮頸がん細胞株の核内局在を共焦点顕微鏡で確認)を発現させた場合は,細胞の浸潤能力が増強した.さらに,aPKCの発現異常が悪性腫瘍の進展に関連するメカニズムを明らかにする.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1)CINの発がんの機序解析は、今年度細胞の培養条件が適合せず、不十分な評価に終わったため、複数の扁平上皮不死化細胞株を用いて再検討する.
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Strategy for Future Research Activity |
1)前向き観察研究: 現在150症例から250症例を目標として症例の登録を継続する.初回生検検体のHE染色でCINの評価,aPKC発現,HPVのタイピング(保険診療)で層別化して各サブグループの中でリスク分類を行う.例えば,HPV陰性例の高リスク群やハイリスクHPV陽性例の中の低リスク群などの抽出を新しい視点で行い,症例評価を精密化する.
2)aPKCによる浸潤能の機序解明:aPKCの核局在型変異体と対照をマイクロアレイにより比較し,細胞の浸潤能力の増強に関連する遺伝子を検証する.複数の候補遺伝が発現抑制されることから,aPKC下流遺伝子でがんの進展を抑制する遺伝子として注目している.テトラサイクリン誘導発現システムを用いて核局在型aPKC 変異体の発現を容易に行えるようにして、候補遺伝子のノックダウンと組み合わせることで,細胞浸潤能力をMTTアッセイ 細胞浸潤遊走能をボイデンチャンバーで評価する.また、子宮頸癌およびCIN組織のaPKC と関連遺伝子の発現パターンを免疫組織化学で評価し,実際の臨床検体でaPKC核局在をおこしている症例とパターンと比較する.
3)CINの発がんの機序解析は、今年度細胞の実験条件でうまくいかなかったため、複数の扁平上皮不死化細胞株を用いて、aPKC強制発現による細胞浸潤能力の変化やBCG感受性の変化を評価して、BCGが治療法として有用か検討する.
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Causes of Carryover |
令和元年度に不死化扁平上皮に、BCG投与や核局在型aPKCの発現を行い、マイクロアレイなどで遺伝子発現の網羅的解析を行う予定であったが、細胞の調整に問題があったため、浸潤がんの細胞株を用いた実験を先行した。来年度に複数の不死化細胞株を樹立して、再度解析を行う予定。 CIN前向き観察研究の症例集積とデータ収集を行っていたが、集積が症例数が一定数に至らなかったため、免疫組織化学などの解析を行っていない。本年度末で150例の症例数に達したため、令和二年度に実験試薬の購入・薄切の依頼や解析を行う。
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