2020 Fiscal Year Research-status Report
新たな細胞死フェロトーシスに着目した卵巣癌における薬剤抵抗性機構の解明
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19K18661
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
山谷 日鶴 山形大学, 医学部, 客員研究員 (40550637)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 卵巣癌 / 細胞死 / アポトーシス / フェロトーシス / スルファサラジン / パクリタキセル / 薬剤耐性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、卵巣明細胞癌細胞株(TOV21G, RMG-1, HAC2, ES2)におけるスルファサラジン(SAS)とpaclitaxelの併用投与による細胞死誘導機構についての検討を行った。アポトーシスのマーカーであるcleaved-PARPの発現をwestern blotting法で検討したところ、SASとpaclitaxelを併用するとそれぞれの単剤投与と比較してcleaved-PARPの発現が増強することをHAC-2以外の細胞株で確認し、SASとpaclitaxelの併用投与による細胞死誘導機構がアポトーシスであることを明らかにした。さらにSASとpaclitaxelの併用投与による活性酸素(ROS)の産生量を検討したところ、SASとpaclitaxelを併用するとそれぞれの単剤投与と比較してROS産生量が増加することをHAC-2以外の細胞株で確認した。また、SASとpaclitaxelを併用によるフェロトーシスの誘導効果をフェロトーシス阻害剤であるferrostatin-1を用いて検討したところ、ESのみとフェロトーシスが誘導されていることが明らかになった。そこでグルタチオン代謝経路に関連した蛋白の発現をwestern blotting法で検討したところ、ESではグルタチオンペルオキシダーゼ4(GPx4)の発現低下を認め、そのためSASによるフェロトーシス誘導効果が高いと考えられた。さらにSASとpaclitaxelの併用投与による効果がHAC-2で認められないのは、SASが阻害するシスチントランスポーター(xCT)ではなくメチオニンからグルタチオンを産生する経路であるtrans-sulfration pathwayに関連したcystathionine gamma-lyase(CGL)の発現がHAC-2では高いためであると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
卵巣明細胞癌は再発時、薬剤耐性となることが多い組織型である。薬剤抵抗性となった症例では、2nd lineの化学療法としてweekly paclitaxelが行われる。我々のこれまで研究結果からSASがpaclitaxelの効果をアポトーシスの誘導によって増強することが明らかになった。さらに、GPx4が低下してる腫瘍組織ではフェロトーシスも誘導され、よりSASとpaclitaxelの併用効果が高い可能性がある。また、CGLの発現が亢進している腫瘍組織ではSASがpaclitaxelの併用効果が低い可能性があり、患者一人ひとりに最適な治療(precision medicine)を実現できる可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果からin vitroでは卵巣明細胞癌細胞株におけるSASとpaclitaxelの併用効果が明らかになった。現在、明細胞癌細胞株RMG-1をマウスの皮下に接種し、腫瘍径が10mmの達した時点から①vehicle(PBS)、②paclitaxel(20mg/kg)、③SAS(200mg/kg)、④paclitaxel+SASを4週間投与し、その後は経過観察を行い、腫瘍体積を計測し、SASとpaclitaxelの併用による抗腫瘍効果がin vivoでも認められるか、検討中である。さらに臨床検体におけるグルタチオン代謝経路に関連した蛋白の発現について免疫染色を行い、予後との関連も検討中である。また、フェロトーシスの誘導機構についてGPx4以外の因子についても検討を進める予定である。
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Causes of Carryover |
今年度はin vitroでの実験が主であったため。 次年度はin vivoの実験と臨床検体を用いた検討を行う予定であり、マウス購入・飼育費と投与する薬剤費、さらに臨床検体を免疫染色する委託費に使用する予定である。
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