2019 Fiscal Year Research-status Report
血流豊富な妊娠組織遺残を維持する分子機構の分泌性蛋白質スクリーニングによる探索
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19K18662
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
佐藤 明日香 千葉大学, 医学部附属病院, 助教 (60779859)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 妊娠組織遺残 / 血管拡張因子 / 免疫組織化学染色 / アドレノメデュリン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、流産・中絶・胞状奇胎後の妊娠組織遺残の一部の症例が、子宮筋層からの著明な血流を受けることに着目した。これらの症例は大量出血のリスクが高く、子宮動脈塞栓術や子宮全摘術など、その後の妊孕性に影響を及ぼす治療が必要になることがある。申請者らの施設では、血流を伴う妊娠組織遺残の症例に対し、遺残組織を摘出することで速やかに筋層血流も消失することを経験してきたため、遺残組織から分泌される血管拡張因子が、病態に関与しているとの仮説を立てた。 本年度はまず、候補となる血管拡張因子として、過去に当研究室で行った絨毛組織のマイクロアレイで発現が高く、文献的に血管拡張作用を持つことが示されている分泌性タンパクのアドレノメデュリンについての解析を行った。過去の妊娠組織遺残の症例の病理標本を用いて、アドレノメデュリンの発現を免疫組織化学染色で評価した。血流豊富な妊娠組織遺残の病理標本をアドレノメデュリン抗体を用いて免疫組織化学染色を行ったところ、絨毛上皮および脱落膜でアドレノメデュリンが強く発現していることが分かった。しかし、妊娠組織遺残は絨毛・脱落膜・血腫・壊死組織など多彩な組織像を含むヘテロジニアスな構成をとるため、妊娠組織遺残の血流の有無によってアドレノメデュリンの発現に差があるかの評価は困難であった。そこで、次年度は、組織アレイの標本を作製して、アドレノメデュリンの発現が、妊娠組織遺残の血流の有無によって異なるかを評価する予定である。 さらに本年度は、流産・中絶・胞状奇胎後の妊娠組織遺残の症例について手術検体を回収し、凍結保存した。これまでに20件の凍結検体を保存した。凍結検体からRNAを抽出し、RT-PCRでcDNAの保存も行った。この凍結標本から抽出したRNAを用いて、次年度マイクロアレイ発現解析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定どおりの進捗状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、第一の候補分子であるアドレノメデュリンについては、過去の絨毛遺残症例の病理標本を用いて組織アレイの標本を作製する予定である。アドレノメデュリンの発現が、妊娠組織遺残の血流の有無によって異なるかを評価し、絨毛遺残症例の血流有無への関与を検討する。 また、アドレノメデュリン以外に候補となる血管拡張因子を検索するため、新規に凍結保存した絨毛遺残の標本から抽出したRNAを用いて、マイクロアレイ発現解析を行う予定である。マイクロアレイ発現解析の結果、発現が高い分子の中から、分泌性タンパク質であること、血管拡張因子の可能性があることの2点より2次スクリーニングを行う。候補分子と考えられるものに対して、絨毛遺残に対する血流の有無と相関があるかを免疫染色やリアルタイムPCR法などで検証し、解析を行う。
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Causes of Carryover |
今年度予定していた学会参加費・旅費が、予定より少なくなったため。 次年度は、絨毛遺残凍結検体から抽出したRNAを用いたマイクロアレイ発現解析(4検体で約280,000円の見込み)、組織標本の免疫染色およびリアルタイムPCRに使用する消耗品、学会発表の旅費(国際学会1回、国内学会3回)、論文作成に関する費用等に使用する計画である。
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Research Products
(9 results)