2019 Fiscal Year Research-status Report
卵胞発育を自在に制御し卵巣組織培養と卵巣保護に応用する研究
Project/Area Number |
19K18668
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
邨瀬 智彦 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (90803114)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 妊孕性温存 / 卵巣組織培養 / 不妊治療 / がん生殖 / 原始卵胞の活性化 / 卵巣保護 / 卵胞発育 / ヒト顆粒膜細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、悪性腫瘍治療後の妊孕性温存の問題がクローズアップされるようになったが、女性においてはGnRHアゴニストによる卵巣保護効果は不確実であり、凍結卵巣自家移植には時に卵巣内の悪性腫瘍細胞の再移入のリスクがある。ゴナドトロピンによる卵巣刺激が臨床応用されて久しいが、ゴナドトロピン依存性獲得前の初期卵胞発育制御機構については未だ不明な点も多く臨床応用にも至っていない。 本研究の目的は、卵巣組織培養の連続観察系と不死化ヒト顆粒膜細胞を用いたin vitroの実験系により初期卵胞発育促進・抑制因子をキャラクタリゼーションし、それらの因子や阻害剤を組み合わせ、促進効果の応用として卵巣組織培養における原始卵胞からの成熟卵を獲得し、抑制効果の応用として卵胞発育抑制による抗がん剤からの卵巣保護法を開発することである。本研究は異なるその2つの応用により、初期卵胞発育制御機構を解明し、現状の卵巣保護法・卵巣組織凍結における弱点の克服を目指すものである。 これまでの実験にてex vivoで卵胞発育を促進する因子として、GDF-9, BMP-15, IGF-1,Kisspeptinおよび抑制因子としてAMH, mTORインヒビター等を見出していたので、これらの薬剤がどの段階の卵胞発育に関与しているのか、マウス薄切卵巣を用いた連続観察を行い得られた発育曲線を解析した。 観察が困難な原始卵胞~一次卵胞については、卵母細胞の減数分裂進行に伴い発現するoog1遺伝子にGFPタグをつけたトランスジェニックマウス(oog1-AcGFP1マウス)の卵巣を用いて蛍光顕微鏡下の連続観察にて卵母細胞を同定し、そのシグナル増強で発育の判断を行い、発育卵胞コホートのダイナミクスを検証した。また、卵母細胞の活性化(原始卵胞のリクルートメント)については、FOXO3Aの局在(核外移行で活性化)を免疫組織染色で評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究はⅠ,卵胞発育の効果的促進系を見出し、卵巣組織培養系を確立する、Ⅱ,卵胞発育抑制を根拠とする卵巣保護系を確立する、の二つから成り立っている。初年度~2年目にはI,IIに共通な実験系として、以下の3系統の実験を行う計画であった。 I/II-1. 精細な連続観察で行う卵巣組織培養系の確立と卵胞発育ダイナミクス解析としてex vivoで卵胞発育を促進する因子がどの段階の卵胞発育に関与しているのか、マウス薄切卵巣を用いた連続観察によって得られる発育曲線を解析する。oog1-AcGFP1マウスの卵巣を用い蛍光顕微鏡下の連続観察にて卵母細胞を同定し、発育卵胞コホートのダイナミクスを検証する。 I/II-2. BrdUパルスチェイス法およびFOXO3A局在評価による卵胞発育促進・抑制点の解析として、同様の培養系でBrdUの取り込みを検証する。どの段階の卵胞の顆粒膜細胞に取り込まれるかにより、上記因子の卵胞発育促進または抑制の主たる作用点の解明が可能となる。また卵母細胞の活性化については、FOXO3Aの局在を免疫組織染色で評価する。 I/II-3. 顆粒膜細胞増殖・抑制における細胞内シグナル解析として、細胞内シグナルSmad1/5/8、Smad2/3等および、FSH・LHレセプターの発現誘導について解析する。HGrCを用い各因子作用下での上記シグナルの活性化をWestern blottingで、FSH・LHレセプターの発現については定量的PCRで確認する。さらにアロマターゼ遺伝子発現、エストラジオール、プロゲステロン産生能についても検証する。 I/II-1については、予定通り研究をすすめ有意な結果を得ている。I/II-2については半分程度の進捗で研究継続中である。I/II-3についてはFSHレセプターについて研究を継続中である。以上より、本研究の進捗状況としておおむねに順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度~2年目に計画している研究を予定通り進めていく。単一の初期卵胞発育促進因子を治療に用いることができない理由として、それらの因子が卵巣内において複雑に相互作用をしていることと、抑制性の制御が働くことがあげられる。初年度の実験により、卵胞発育のどの段階を主たる作用点とするか、その場合の作用機序(細胞内シグナル、ゴナドトロピンレセプター誘導の有無)についてのデータが得られている。今後は複数因子をシーケンシャルに組み合わせることで卵巣組織培養系での効果的な卵胞発育の促進または抑制が可能になると考え以下の実験も行っていく。 I-4. マウス卵巣組織培養における卵胞発育の効果的促進系の確立としてI/II-1と同様の系で、1) 原始卵胞~一次卵胞発育促進因子→一次~二次卵胞発育促進因子のシーケンシャル投与、 2) 細胞内シグナル経路の異なる因子の併用、3) 促進因子+抑制因子のインヒビター(中和抗体やレセプターブロッカー)の併用効果を解析する。卵胞発育スピードと共に、得られた卵の成熟度、体外受精による受精能・胚発生能も評価する。 I-5. ヒト卵巣組織培養系の確立と卵胞発育促進効果の解析として、上記研究で得られたデータをヒト卵巣組織培養に応用する。ヒト卵巣組織においては、卵胞密度はマウスより粗であり間質も多いため、観察が困難である・培養液中に添加した因子が作用しにくい等の問題がある。この点を考慮し、より細切した組織での培養を行うとともに、その場合の卵巣形態の維持のためアルギン酸ゲルを用いた3D培養系にて評価を行う。得られた卵については成熟度、形態評価を行う。 これらの研究が順調に進めば、さらにマウス卵巣組織培養における卵胞発育の抑制系の確立と抗がん剤からの卵巣保護について研究を開始する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス拡大の影響で、国際学会の発表を取りやめたことで出張費に余剰が生じた。次年度以降に、発表の機会を確保して研究成果を社会に還元していく方針である。
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[Presentation] Exogenous Anti-AMHRII Antibody Treatment Induces Follicular Development in Sliced Ovarian Tissue Cultures2019
Author(s)
Tomohiko Murase, Kouji Komatsu, Wei Wei, Reina Sonehara, Natsuki Miyake, Mayuko Murakami, Ganieva Umida, Bayasula, Sayako Yoshita, Ayako Muraoka, Shotaro Hayashi, Natsuki Nakanishi, Yukiyo Kasahara, Phuoc X Nguyen, Nobuyoshi Takasaki, Tomoko Nakamura, Satoko Osuka, Maki Goto, Fumitaka Kikkawa
Organizer
第67回Society for Reproductive Investigation Annual Scientific Meeting
Int'l Joint Research
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[Presentation] Primary follicles suppress the growth of primordial follicle2019
Author(s)
Wei Wei, Kouji Komatsu, Tomohiko Murase, Reina Sonehara, Natsuki Miyake, Mayuko Murakami, Umida Ganieva, Bayasula, Sayako Yoshita, Ayako Muraoka, Shotaro Hayashi, Natsuki Nakanishi, Yukiyo Kasahara, Nobuyoshi Takasaki, Tomoko Nakamura, Satoko Osuka, Maki Goto, Fumitaka Kikkawa
Organizer
第67回Society for Reproductive Investigation Annual Scientific Meeting
Int'l Joint Research
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